2020 Fiscal Year Research-status Report
原発事故による放射性物質拡散が農山漁村の自然資源利用に与えた影響とその対応
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18K05701
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
山本 信次 岩手大学, 農学部, 教授 (80292176)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 原発事故 / みえない被害 / ムラの暮らし / 農山漁村 / コロナ禍 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナウイルス蔓延による影響で農山漁村における生産や生活における「みえない被害」の実態調査については強い制限を受け、訪問箇所を減らさざるを得なかった。そこで既存の調査結果の精査を行うと同時に、これまでの研究成の一部を取りまとめ森林文化協会年報、その他に掲載した。その概要は以下の通りである。 福島第一原子力発電所事故の発生に伴い、東日本の広範囲にわたり放射性セシウムを中心とする放射性物質が拡散し、未だ多くの人々が避難生活を余儀なくされている。また、放射性物質の拡散は、農山漁村の自然資源に大きく影響を与え、ムラでの暮らしを継続する人々の「農的な営み」にも大きな影響を与えている。しかし「ムラに暮らし続ける人々の「農的な営み」をめぐる被害」は「国民の多数を占める都市住民には理解しがたく」、「「避難のように明白に可視化しやすくもなく」、「被害の金銭換算が難しく」、「技術的解決になじみがたく」、「被害者による「防衛的被害隠し」が起きやすいためさらに不可視化が進みやすく」、そして他の原発事故被害に比して「記述されている個別事例数が少ない」という特徴をもち、被害の可視化は未だ不十分であることが明らかとなった。 またドイツなどにおけるチェルノブイリ原発事故に関わる自然資源利用への影響調査なども続けてきたが、事故から30年以上を経て、おおむね被害は意識されなくなりつつあるものの一部の野生動物利用や林産物利用には引き続き影響が残っていることが明らかとなった。被害の解消に向けては、直接的な関係者としての農山漁村住民の努力のみに頼るのでなく、都市住民や社会的支援の必要性があきらかとなったがコロナ禍においてはそうした連携が困難化していることも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウイルス蔓延防止のため都市部から高齢者の多い農山村への訪問は控えなければならない状況があり調査に支障をきたした。また海外渡航も制限されたため予定していた欧州への訪問調査が実施不能となった。結果としてデータ収集を思うようにすすめることができなかった。 こうした状況下においてもこれまでの調査結果を精査し、いくつかの論文を学会誌等に掲載することができたのは僥倖であった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナの感染防御に留意しつつ、農山漁村における自然資源利用に生じている「みえない被害」を明らかにするために東北・北関東を中心に事例調査を続ける。 ドイツなどにおけるチェルノブイリ原発事故に関わる自然資源利用への影響調査についても継続の希望を持っているが新型コロナウイルスの関係で渡航が難しい場合は、メールでの聞き取り調査なども検討する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため国内調査・海外調査ともに予定通りの実行が不可能となったため。 次年度に可能な限り調査を増やして計画通り執行予定
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