2022 Fiscal Year Research-status Report
原発事故による放射性物質拡散が農山漁村の自然資源利用に与えた影響とその対応
Project/Area Number |
18K05701
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
山本 信次 岩手大学, 農学部, 教授 (80292176)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 原発事故 / 視えない被害 / コロナ禍 / オートキャンプ / シイタケ生産 / 有機農業 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナウイルス蔓延による影響で農山漁村における生産や生活における「みえない被害」の実態調査は困難が続いたものの、感染状況が小康状態になる合間を縫って聞き取り調査等を行い、その成果に加えて、これまでの研究成果を取りまとめspringer社より発刊された共著書『Adaptive Participatory Environmental Governance in Japan』に「Resilience and Invisible Damage: The 2011 Nuclear Accident and Natural Resources Management」を発表した。その概要は以下の通りである。 福島第一原子力発電所事故の発生に伴い、東日本の広範囲にわたり放射性セシウムを中心とする放射性物質が拡散し、農山漁村の自然資源に大きく影響を与え、ムラでの暮らしを継続する人々の「農的な営み」にも大きな影響を与えている。 生態系サービス利用の一つであるレクリエーション利用としての福島県内のオートキャンプ場経営もまた大きな影響を受けたものの、専門的知見に基づきその利用回復に成功している。しかしながら、別セグメントの顧客開発などによる利用回復では従来の顧客の利用が回復したわけではないにもかかわらず補償が減額されるなどの矛盾も大きいことが明らかとなった。この他、岩手県内のシイタケ生産や有機農業においてもも資源利用は継続されているものの、「農山漁村と都市あるいは一次産品生産者と消費者との分断」、「地域資源を利用した第一次産業や「農的営み」における、地域資源との有機的連鎖の喪失」、「一次産品生産者としての誇りの毀損」「地域コミュニティ・家族内・同業者ネットワークなど様々な社会関係資本の毀損」など、人や自然との関係性の分断が存在していることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により制限されたものの、国内・海外ともに調査は再開でき、データ収集は当初予定に戻りつつある。またインターナショナルな成果発表もかない、遅れを取り戻して、おおむね順調に進みつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍で進められなかった聞き取り調査を進め、さらに「みえない被害」を詳細に明らかにすることとする。 具体的には控えていた農山村高齢者への聞き取りを重点に行うなどし、研究を完成させたい。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍のため調査が予定通りに行えず、執行残が生じた。 次年度の調査旅費として使用予定
|
Research Products
(1 results)