2018 Fiscal Year Research-status Report
消滅していく城下町の水路と池庭の名残りや記憶の残し方
Project/Area Number |
18K05706
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
佐々木 邦博 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (10178642)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 城下町 / 水路網 / 庭園群 / 伝統的景観 / 記憶の継承 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は都市固有の景観を形成している要素として、城下町に残る水路網、池がある庭園、緑の景観に焦点を当て、その地域固有の景観の保全状態を調査し、困難な場合には、さらにその名残や記憶の残し方を調査研究していくものである。 今年度は、主に長野市松代町の現状を調査した。松代城下町にはほぼ全域に江戸時代由来の水路網が残り、また城下町南部と東部を中心に武家屋敷地が多く残されていた。現状調査の結果、屋敷地が消えてミニ開発が行われ新たな住宅地に変化している区画が、新たに3カ所確認された。武家屋敷地は1軒が約800坪あるので、開発しやすい。水路網だが、大きな変化はなかった。ミニ開発が行われた場所だけ、水路の場所が変わっていた。池のある庭だが、ミニ開発された場所を中心に失われた。 城下町全体でみると、水路や池庭を中心に城下町の特徴が保全されていると言えるのが、代官町、竹山町、松山町の3町であり、表柴町や裏柴町ではほぼ失われてきたことがわかった。景観的な側面では、この2町では通りから見える庭木の緑が減少した。 他の城下町だが、群馬県甘楽郡甘楽町小幡では変化はなかった。武家屋敷である松浦家庭園は発掘調査され、景観を取り戻していた。長崎県雲仙市国見町神代地区、さらに島原市でも変化はなかった。庭園も水路も以前と同じ状態であった。福岡県柳川市では、小さな水路に水が流れなくなったところもあり、庭園の池に水が入らなくなってきた場合も見受けられた。大きな堀は別として、特に小規模の水路と池が少しずつ消滅している状態であった。 これらの調査結果は、平成31年度秋の庭園学会で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れている。長野市松代町の調査は順調だが、福岡県柳川市と長崎県雲仙市、島原市を調査した時、大雨であり、よく確認できなかった場合がある。 2019年度は、各城下町における現在の課題とその対策を調査する時に、補足の現状調査を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、人口減少と高齢化が進む社会において、地域固有の景観と環境、他の文化資産との関連を重視しながら、各城下町の現状の課題を整理するとともに、各都市でどんな対策がとられているのか、対策とその効果をまとめる。 また、現状の水路や庭池が消滅せざるをえない場合、どのようにしたら水路や庭池の跡を痕跡でも残せる可能性があるのか、消滅した場所の実態を把握し、残し方の可能性を探っていく。
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