2018 Fiscal Year Research-status Report
壁面緑化用コケパネルの病害調査と健全育成法に関する研究
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18K05708
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
古川 聡子 首都大学東京, 理学研究科, 助教 (00221565)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 壁面緑化 / コケ類 / コケパネル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年年度は1.蘚苔類による緑化施工現場の実態調査、2.蘚苔類の生育特性調査、3.蘚苔類に発生する障害の発生機構の調査、4.過酷な条件での施工技術の調査検討、および 5.病原菌フリー苗の生産システムの確立の研究を予定した。 1.蘚苔類による緑化施工現場の実態調査に関しては、すでに施工されている現場のコケの生育状況、微気象等の環境条件、障害発生の実態を様々な条件の事例について調査を行った。その結果、垂直度が大きいほど障害が大きいということが一般的にいえることが分かった。しかし、特に条件が過酷であると思われる東京都内数例に関しての定点観測では、傾斜や壁面の方角との関連は認められなかった。昨年度の夏の非常に苛酷な熱によるダメージが最も強く表れたものと思われる。 2.蘚苔類の生育特性調査に関しては、潅水条件などの水分環境、塩類集積などの化学性環境、基盤傾斜などの物理的環境に関する生育の特性に関する実験を行い、適切な水分量、塩類への耐性の限界等を検討した。 3蘚苔類に発生する障害の発生機構の調査、に関しては、不適切な灌水量、灌水間隔により支持基盤に水が溜まりその水が暖められ、仮根に障害を起こすケースが多いことが分かった。水分不足を警戒し、流れきる以上の水分を供給した結果であると思われる。 4、5に関しては、基礎的な知見を得たが、来年度以降引き続きより詳細な研究を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度は、主に現在のコケパネルの実態調査から、障害を起こしやすい条件を一般化しようとしたが、夏場の例外的な猛暑により、本来なら妥当と思われた条件の場所においても全般的なダメージが大きく、当初予想していたような顕著な違いが認められなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
コケのダメージは夏の天候によって大きく影響されることが推測されたので、今年度以降は、調査の時期を早めることにより、生育条件の差によるダメージの違いをはっきり明らかにさせる。 それ以降の実験計画に関しては、特に変更はせず、平成31年度は1.蘚苔類による緑化施工現場の実態調査、2.蘚苔類の生育特性調査、3. 蘚苔類に発生する障害の発生機構の調査、4.過酷な条件での施工技術の調査検討、5.病原菌フリー苗の生産システムの確立のための研究を行う予定である。 当年度は、現場のコケの生育状況、微気象等の環境条件、障害発生の実態の調査を前年同様継続し、季節、天候等の環境要因と生育およびその障害に関するまとまった知見を得る。また前年行った潅水条件などの水分環境、塩類集積などの化学性環境、基盤傾斜な どの物理的環境に関する生育の特性に関する実験をもとに、条件による最適な栽培条件を検討する。前年同様スナゴケやハイゴケに発生する病虫害または生理障害の発生機構を解明するために、積極的にサンプルを採集し菌を分離、人工接種を行うことにより現在まったく知見のないコケの病害に関する知見を得る。踏圧等の人的関与や自然環境変化の激しい環境での施工・管理技術についての調査検討を継続して行う。前年に引き続き無病苗作出の方法を検討する。無病苗の維持生産技術を確立し、1次増殖圃場と生産農家での増殖技術をシステムとして構築する。 平成32年度は、上記研究の不足分を継続して行うとともに、論文としてまとめる。また、コケ以外の植物に関しても、緑化植物特有の病害について検討を始め、次の研究につなげる。
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Causes of Carryover |
今年度の研究が手持ちの設備、消耗品で賄えたこと、また学会発表が次年度になったため旅費の支出がなかったことにより次年度使用額が生じた。 研究計画自体に変更はなく、下記の研究を行う。 現場のコケの生育状況、微気象等の環境条件、障害発生の実態の調査を前年同様継続し、季節、天候等の環境要因と生育およびその障害に関するまとまった知見を得る。また 前年行った潅水条件などの水分環境、塩類集積などの化学性環境、基盤傾斜などの物理的環境に関する生育の特性に関する実験をもとに、条件による最適な栽培条件を検討する。前年同様スナゴケやハイゴケに発生する病虫害または生理障害の発生機構を解明するために、積極的にサンプルを採集し菌を分離、人工接種を行うことにより現在まったく知見のないコケの病害に関する知見を得る。
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