2018 Fiscal Year Research-status Report
樹体内の水移動の実測に基づいて樹冠や根系の縮減を抑えた樹木移植法の検討
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18K05714
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
竹内 真一 東海大学, 海洋学部, 教授 (30268817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯田 真一 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70375434)
日高 英二 南九州大学, 環境園芸学部, 准教授(移行) (90258666)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 樹木移植 / 樹液流速 / キャリブレーション / カラタネオガタマ / スギ / HR法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,“樹体内の水の流れ”という造園・緑化技術者にも理解しやすい実際の指標を用いて,樹木移植の現場に資する有益な知見を得るために,①実際に樹液流計測結果を用いながら,根回し工事で実施される強剪定や根系切断量を極力抑えた樹木移植法を検討し,②移植時の蒸散活動を抑制するために根鉢に冷水を付与することによる低温ストレスが, 樹木移植作業に役立つかどうかを明らかにする,③本研究で取り扱うHFD法,HR法,グラニエ法の測定精度を検証するキャリブレーションを“根鉢秤量法”を中心に行い,研究者・技術者への樹液流計測の指針を構築する,ことである。初年度は①と③について成果を得た。まず,①大型根鉢の適用が移植困難木の移植成功度を高める,との仮説を検討するために,カラタネオガタマを対象として幹径の7倍の直径の根鉢を作成し,移植前後のHR法によるヒートパルス速度および蒸散量の変化を2回実測した。その結果,ヒートパルス速度は,根鉢作成に伴う根系切断により,移植前に比べ21%低下したが,移植後2年間の年最大値には大差は見られなかった。移植後3年目に,同一個体について再度大型根鉢を作成したところ,実測された蒸散量は初回と同量であった。さらにこの根鉢のサイズを縮減するとヒートパルス速度は53%低下し,蒸散量も45%減少した。これらのことから,大型根鉢を用いれば当該樹木を順調に移植可能であると結論される。次いで,③スギ幼齢樹(14年生)を対象に根鉢秤量法により蒸散量を直接測定し,樹液流速の測定精度について検証した。計測センサーを設置してから3カ月が経過すると,樹液流速は過小評価の傾向を呈した。別のセンサーを過小評価発生後に,同じ場所に再度設置したところ,過小評価発生以前の傾向に近い値が計測された。このことから,スギを対象として樹液流計測を行う際には,過小評価の検討を行う必要があることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の所属変更により,実験の遂行に支障をきたすことが危惧されたが,分担者の所属する樹木園や苗畑等での円滑な実施により,計画通りに進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
つくば市の森林総合研究所内の苗畑にて継続計測中のスギの苗木を対象に根鉢秤量法を適用し,蒸散量との比較のためのデータセットを得るとともに,切り木法や強制通水法などの他のキャリブレーション法との比較を行う。 また,カラタネオガタマの実験木では,8月に再び根鉢秤量法を適用し,根系を大きく縮減した場合の樹液流動への影響を精査する。 さらに移植時の冷水付与による低温ストレスの検討について,熱帯果樹等を対象に検証する予定である。
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Causes of Carryover |
分担者の物品購入において,残額が生じ,所属機関の予算計上の都合上,繰越金が生じたため.
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Research Products
(3 results)