2018 Fiscal Year Research-status Report
ヴェルサイユ宮殿庭園の管理運営手法と復元対象年代の設定について
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18K05715
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Research Institution | Minami Kyusyu University |
Principal Investigator |
平岡 直樹 南九州大学, 環境園芸学部, 教授(移行) (20389571)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 庭園管理 / グリホサート系除草剤 / ネオニコチノイド系農薬 / メセナ / チュイルリー公園 / リュクサンブール公園 / フォンテンブロー宮殿 / 王の菜園 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は初年度であることから、(1)調査対象であるヴェルサイユ宮殿庭園及び往時の付属施設であった王の菜園の管理運営に関わる全体像を把握すること、(2)フランスにおける他の公園緑地の管理運営状況を把握し比較を行うことで、ヴェルサイユ宮殿庭園における管理状況の普遍性や特殊性を明らかにすることを2つの柱として研究を展開した。 (1)ヴェルサイユ宮殿及び王の菜園の管理体制 運営体制、予算規模、管理運営方針、管理手法の概要について文献調査及び現地調査を行い考察を行った。その結果、ヴェルサイユ宮殿は、世界的な歴史遺産であることから入場者数も多くチケット販売による収入が7割近くを占める予算が潤沢であること、さらにメセナという言葉がフランス語であることから分かるように、企業による文化・芸術活動の支援が盛んでメセナによる収入が全収入の15%程度を占め、大きな役割を果たしていること、農薬(グリホサート系除草剤、ネオニコチノイド系農薬)を使わない庭園の維持管理が、大型機械(スカリフィケイター・スクレイパー等)導入による合理化や維持管理水準の引き下げ、農薬不要の品種への転換などの試行錯誤を伴いながらも積極的に進められていることが分かった。 (2)フランスにおける他の公園緑地の管理状況 ヴェルサイユ庭園とほぼ同時期に整備されたフランスの宮廷に関連する3つの庭園、チュイルリー公園、リュクサンブール公園、フォンテンブロー宮殿庭園の管理についての現地調査及び管理責任者への聞き取り調査を行った。その結果、除草剤、殺虫剤を使わない管理方針・手法や大型機械の導入に関してなど多くの共通性が見いだせる一方で、面積規模や管理主体の違いによる管理のあり方のそれぞれの特性を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ヴェルサイユ宮殿庭園の(1)管理運営体制と予算、(2)復元の対象時代の設定、(3)日常管理の実際-管理機器・用具類、(4)独自の企画運営の特徴を明らかにするという4つの柱から構成されている。 (1)管理運営体制と予算については、研究実績の欄において記述したように、管理運営体制の概要を把握することができた。しかし、予算については、庭園の管理運営に関わる予算の把握までには至らなかった。 (2)復元の対象年代の設定については、ヴェルサイユ宮殿の顧問建築家への聞き取りや庭園担当者へのヒヤリングを行うことによって、管理者が歴史的に最も栄えた時期への回帰を望むのに対し、現場担当者は整備の履歴を重要視するなど、両者の間で意見の違いがあることの把握には至っている。今後は組織としての方針をどのように設定し運用していくのかを調査する予定である。 (3)日常管理の実際-管理機器・用具類については、研究実績の欄で述べたように、農薬を使わない管理のための大型機械類の調査や伝統的な工具類を現地で実際に見せてもらうなどの調査を行った。しかし、工具や用具類は多岐に亘るため全体を把握するには時間が必要である。 (4)独自の企画運営については、オランジュリーなどの庭園施設の貸し出しやイベント開催等についていくつかの事例があることについて把握することができた。今後は詳細な内容を記録した文献資料の有無について調査を行っていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況と同様に、4つの視点から示したい。 (1)管理運営体制と予算 庭園実質を実質的に管理しているヴェルサイユ庭園管理課とトリアノン・マルリー庭園管理課、及び噴水課の予算について、管理運営に関わる予算配分の調査を行う。また、日常的な管理運営の詳細な情報の入手を進める。 (2)復元の対象時代の設定 ヴェルサイユ宮殿の顧問建築家への聞き取りや庭園担当者へのヒヤリングを再度実施し、組織としての方針をどのように設定し、実際に運用していくのかの調査を行う。 (3)日常管理の実際-管理機器・用具 実際に機器や用具を用いて管理している場面で調査観察を行うのが最良であることから、引き続き日常的な管理の現場に出かけて調査を行う。それ以外のものは、道具類の保管庫への立入り許可を得て担当者への聞き取り調査を実施する。 (4)独自の企画運営 オランジュリーや池泉等の庭園施設の貸し出しやイベント開催等について、詳細な内容を示した文献資料の入手と分析を行う。 上記の4点について、現地調査や文献調査等を継続して実施し、それぞれについての分析考察を行す。また、他の公園緑地の管理状況についての調査をサン・ジェルマン・アン・レー城庭園、マルリー城址公園等にも拡大し、フランスの宮廷庭園に共通した管理運営の特質を明らかにするとともに、特にヴェルサイユ宮殿庭園に特徴的な管理運営状況も明らかにする。最後にこれらの調査の分析結果の総括を行っていく。
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