2020 Fiscal Year Annual Research Report
About the management method of the Palace of Versailles garden and the setting of the restoration target age
Project/Area Number |
18K05715
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Research Institution | Minami Kyusyu University |
Principal Investigator |
平岡 直樹 南九州大学, 環境園芸学部, 教授 (20389571)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フランス / ヴェルサイユ庭園 / ヴェルサイユ宮殿 / 庭園管理 / トピアリー / 平面幾何学式庭園 / 庭園技術 / ソウギョ |
Outline of Annual Research Achievements |
ヴェルサイユ庭園の管理運営の特徴把握において、特に「環境問題への対応状況」と「技術継承への組織的取り組み」に焦点を当てて取り組んだ。新コロナ禍において訪欧は難しく情報収集は現地の研究協力者に要請した。 (1)環境問題への対応状況 化学薬品使用禁止の方針に対して、庭園の維持管理が大型・ハイテク機械導入による合理化や維持管理水準の引き下げなどにより、水質悪化については物理的に訪問客を水面から隔離する方法によるなど、試行錯誤を伴いながらも組織を挙げて積極的に推進していることがわかった。日本における先行研究からは文化財庭園と環境問題のかかわりを取り上げた事例はなく、当庭園における環境問題への取り組みの先進性が明らかになった。一方で、2006年の水草除去目的のソウギョの運河等への放流に関しては、日本の環境省が生態系被害防止外来種指定するアムール川原産の外来魚の導入は環境面からは疑問が残る。 (2)技術継承への組織的取り組み 伝統的施設の管理技術の継続により技術の永続的な継承をはかる努力がなされている。維持管理の現場において、型(定規)に合わせたトピアリー整形や古い鉛管水路網等の補修業務は伝統技術の継承であるが、国内外を含めヴェルサイユ庭園以外で同様な技術者養成がなされていないため熟練技術者を外部から呼び寄せ確保することが不可能な状況である。そのために自前のトピアリー剪定技術者や鉛管技術者の養成を積極的に行うとともに、業務を外部委託せず直営で行う方針を意図的に取っていることも判明した。ところで、伝統的な技術継承と先進的な技術導入の線引きについてであるが、前者が行われているのは、トピアリーの剪定と鉛管工という現在の技術では代替え不可能な業務であることがわかる。その他の代替え可能な作業はより効率的で安全な管理手法に置き換わっている。フランス人らしい合理主義精神が反映していることが判明した。
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