2019 Fiscal Year Research-status Report
カラマツにおけるカリウム膜輸送体遺伝子の機能および時空間的発現パターンの解明
Project/Area Number |
18K05722
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
細尾 佳宏 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (80377184)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カラマツ / カリウム / トランスポーター / 膜輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、針葉樹(カラマツ)におけるカリウム(K)イオン膜輸送の機構を解明し、それをもとに成長・生理に関する様々な過程でのKイオン膜輸送の役割を明らかにすることを目的としている。本年度は、カラマツのKイオントランスポーター候補遺伝子であるLkKUP3をRACE法により単離し、機能解析と発現解析を行った。さらに、昨年度から継続してKイオントランスポーター遺伝子LkKUP1、2の発現解析を行った。LkKUP3を対象とした機能解析では、大腸菌のKイオン取り込み能欠損株を用いた相補性試験を行った。その結果、LkKUP3はKイオン取り込み機能を持つことが明らかになった。そして、LkKUP3のKイオン取り込みはナトリウム、セシウム、アンモニウム、カルシウムの各陽イオンに影響を受けることが分かった。発現解析では、3月から10月まで1か月ごとにカラマツの苗木から針葉、内樹皮、分化中木部、根の試料を採取し、各部位におけるLkKUP1~3の発現量の季節変動をリアルタイムRT-PCRにより解析した。その結果、LkKUP1の発現量は針葉では夏以降に増加する、LkKUP2の発現量は4部位とも春に増加しその後減少する、LkKUP3の発現量は針葉、分化中木部、根で春から夏にかけて増加し夏から秋にかけて減少するなど、各遺伝子に発現量の変動が見られた。また、LkKUP3の発現は雄花、雌花、球果、種子でも検出され、他の部位に比べて発現量が極端に多いまたは少ない部位は見られなかった。本年度の結果から、カラマツのKイオントランスポーター候補遺伝子LkKUP3について、遺伝子産物のKイオン輸送機能や樹体内での発現パターンについて新規の知見を得るとともに、LkKUP1、2の発現パターンについてより詳細な知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに単離したカラマツKイオントランスポーター遺伝子について、機能解析によりKイオン取り込み機能に関する知見を得ることができた。そして、発現解析により、3個のカラマツKイオントランスポーター遺伝子の各部位における発現量の季節変動パターンに関する知見を得ることができた。また、新たなカラマツKイオン膜輸送体遺伝子の単離するための準備作業も完了し、発現解析のための試料採取・RNA抽出も進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度から継続して、カラマツから新たなKイオン膜輸送体遺伝子の単離を行う。そして、単離した遺伝子について相補性試験を行い、遺伝子産物のKイオン取り込み機能について明らかにすることを目指す。さらに、リアルタイムRT-PCRによりカラマツ樹体内における発現パターンの解析を行う。また、今年度まで解析を行ってきたLkKUP1~3と新たに単離する遺伝子由来の膜輸送体について、原子吸光分光分析や電気生理学的分析を用いてKイオン輸送機能を定量的かつより詳細に明らかにしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
理由:当初計画時よりも研究用物品(試薬類、器具類)が安価で購入できたため、次年度使用額が生じた。 使用計画:次年度(2020年度)請求額と合わせて、旅費と物品費(機能解析用や発現解析用の試薬類、器具類)に使用する。次年度は、東北大での研究打ち合わせや機器の使用、東京や静岡で開催される国内学会での成果発表・情報収集を予定しており、そのために多くの旅費を使用する予定である。また、機能解析用の物品については、より詳細に解析を行うために本年度よりも多くの研究費を使用する予定である。
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Research Products
(4 results)