2021 Fiscal Year Research-status Report
カラマツにおけるカリウム膜輸送体遺伝子の機能および時空間的発現パターンの解明
Project/Area Number |
18K05722
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
細尾 佳宏 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (80377184)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カラマツ / カリウム / 膜輸送 / チャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、カラマツにおけるカリウム(K)イオン膜輸送の機構を解明し、それをもとに成長・生理に関する様々な過程でのKイオン膜輸送の役割を明らかにすることを目的としている。本年度は昨年度に引き続き、Kイオン膜輸送体のうちのKイオンチャネルをコードする遺伝子(LkTPK2遺伝子)をカラマツから単離し、その解析を行った。LkTPK2遺伝子がコードするタンパク質(チャネル)は、two-pore型Kイオンチャネルと高い配列類似性を有していた。そして、Kイオンチャネルの基本構造であるMPM(膜貫通部位-イオン透過孔-膜貫通部位)構造が2回繰り返された4回膜貫通構造を持ち、イオン透過孔中にKイオン選択フィルターとなるGYG(グリシン-チロシン-グリシン)配列が存在するという、two-pore型Kイオンチャネルに共通する構造の特徴を持つと推定された。機能解析では、大腸菌のKイオン取り込み能欠損株を用いた相補性試験を行った。その結果、LkTPK2チャネルはKイオン取り込み機能を持つことが明らかになった。発現解析では、カラマツの各部位(針葉、内樹皮、分化中木部、根、雄花、雌花、球果、種子)におけるLkTPK2遺伝子の発現量を定量RT-PCRにより解析した。その結果、解析を行った全ての部位で発現が検出され、LkTPK2チャネルはカラマツ樹体内の様々な部位の細胞においてKイオン膜輸送に関与している可能性が示唆された。また、針葉、内樹皮、分化中木部、根におけるLkTPK2遺伝子の発現量の季節変動を解析した結果、4部位ともに発現量は季節(月)によって変動し、春に高いことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
補助事業期間を延長して2021年度にすべての解析を完了させ、国内学会等での発表や成果報告書の発行による研究成果の公表を目指していた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響により実験に必要な試薬・器具の一部が入手困難な状況が続き、学外への出張が一時大きく制限されたことなどが理由で研究に遅れが生じた。また、機能解析が難航し、さらに検討が必要となった。そのため、補助事業期間再延長の申請を行い、2022年度での研究完成を目指すこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業期間の再延長により、2022年度も引き続き研究を行う。カラマツのKイオンチャネルおよびKイオントランスポーターについて、電気生理的解析や相補性試験によりK取り込み・排出機能を継続して行い、より詳細に明らかにすることを目指す。また、今年度までの発現解析で明確な発現パターンを明らかにできなかった部位・発達段階についても解析を行い、より詳細なデータを取得したいと考えている。再延長期間においてこれまでの研究の遅延を取り戻し、研究課題の完成に向けて引き続き努力する。
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Causes of Carryover |
補助事業期間を延長し今年度を研究計画の最終年度としていたが、新型コロナウイルス感染拡大による影響に加え研究も想定以上に遅れたため、残額が生じた。補助事業期間再延長を申請し認められたため、次年度に研究課題を完遂できるように予算を使用する。主に、機能解析および発現解析用の消耗品(試薬類、器具類等)に使用する。また、国内学会等での成果発表を予定しており、そのための旅費としても使用する予定である。
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Research Products
(1 results)