2018 Fiscal Year Research-status Report
自然再生が必要な大台ヶ原の生残木に林床のササが及ぼす水分生理学的影響の解明
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18K05725
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
木佐貫 博光 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (00251421)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊谷 朝臣 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50304770)
宮沢 良行 九州大学, キャンパス計画室, 助教 (80467943)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 樹液流速 / トウヒ / 剥皮率 / 生残木 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在の大台ヶ原では,増加したニホンジカによる被食の影響で森林の衰退が進行し,ササ群落の拡大が進行している.これまで,大台ヶ原における森林衰退は,シカによる樹木の摂食だけが原因であるとされてきた.しかし,シカによる被食を回避するための対策として設置された防鹿柵内において,シカの採食から回避したためにミヤコザサ群落もまた繁茂した.このササ群落の蒸散による水消費が,柵内に生残した樹木の水分吸収を妨げることで,森林衰退を後押ししている可能性がある.そこで本研究では,柵内の森林が衰退してできたササ草原に生残したトウヒ成木を対象に,生育期間中の樹液流速の季節変化を明らかにし,樹液流速に影響を及ぼす要因として,気象要因ならびに過去の幹剥皮の程度などの生態学的要因について検討することを目的とした.また,ミヤコザサ群落の蒸散量の推定ついても,ササでの計測に特化した超小型センサーを作成し,来年度から現地においてその樹液流速を測定し,蒸散量の推定を行うための準備が完了した. 2018年5月から11月にかけて,トウヒ18個体の樹液流速を観測し,トウヒの主な生育期間における蒸散量の季節変化を明らかにした.トウヒの樹液流速に影響を及ぼす要因については,正の影響であった日射量および大気飽差に加え,辺材面積が正の,樹高,幹の剥皮率が負の影響を及ぼしていた. 来年度は,林床のササの除去実験を行い,除去の面積規模に応じて,トウヒ生残木の樹液流速における変化を長期間継続して観測する.さらに,ササの蒸散量を,自作の樹液流センサーを用いて樹液流速を計測することで推定する.これらの観測データに基づいて,ササがトウヒ生残木に及ぼす水分生理学的な影響を明らかにする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
樹液流の観測を春から秋まである程度継続的に行うことができたものの,バッテリーの劣化に加えて,9月以降の雨天と曇天の連続が影響したため,データが欠落する個体が少なからずみられたため.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、林床のササの除去実験を行い、除去の面積規模に応じて、トウヒ生残木の樹液流速における変化を調べ、ササがトウヒ生残木に及ぼす水分生理学的な影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度は,研究協力者の都合や,測定のために必要な調査が日帰りで済んだりしたため,計画よりも旅費の執行額が少なくなった. 使用計画としては,次年度使用額の多くを旅費が占めるように計画している.次年度はこれまで行ってこなかったササの刈り取り実験が加わるため,本年度よりも多くの旅費が必要になるためである.また,バッテリーの劣化が生じているため消耗品として補填する.
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