2018 Fiscal Year Research-status Report
菌類の機能形質に着目した多様性指標に基づく森林土壌の分解機能予測
Project/Area Number |
18K05731
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
大園 享司 同志社大学, 理工学部, 教授 (90335307)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 菌類 / 生物多様性 / 機能形質 / 森林土壌 / 分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
森林の土壌分解系は、落葉や落枝といった生物遺体の分解を通じて、栄養塩の循環や、土壌有機物の生成に深く関わっている。このため、森林生態系の物質循環や森林動態を理解する上で、物質生産や食物連鎖といった、地上部における生態系プロセスのみならず、地下部の土壌分解系の構造や機能についての理解が不可欠だが、分解に関わる菌類の機能的な多様性については、これまで充分には研究されていない。本研究課題では、菌類群集の機能的多様性の定量的評価を目的として、モノグラフ「Fungal Families of the World」に集約された科レベルの機能形質を集約し、それをカナダ高標高域のさまざまな環境下で得られた落葉分解菌類の群集データと結合して機能的多様性を評価するとともに、分類学的な多様性にみられるパターンと比較した。その結果、氷河の後退にともなう生態系の発達段階で比較すると、氷河後退直後には厳しい環境条件への耐性を有する機能的に類似性の高い科からなる菌類群集が成立していることが示された。氷河後退にともなう生態系の一次遷移の進行にともない、機能的多様性にみられるそのような傾向は弱まっていた。菌類の分類学的多様性は、氷河後退からの年代と植物の種により有意に変化した。次に、山岳地帯の標高800~1600メートルの範囲で標高にともなう変化をみると、標高の違いは菌類の機能的多様性および分類学的多様性に影響していなかった。この研究と並行して、菌株の培養と分解酵素活性の測定を実施しており、次年度も継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね当初の計画通り進行している。文献資料に基づく機能形質のデータベース化と、菌株の培養と分解酵素活性の測定は順調に進んでおり、平成31年度に向けて継続していく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、当初の計画通り、文献資料に基づく機能形質のデータベース化と、菌株の培養と分解酵素活性の測定を継続するとともに、機能的多様性の定量化および分解など生態系プロセスとの関連性を検討する。野外調査を継続するとともに、実験補助者を雇用して効率的に遂行し、成果発表についても進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)他の研究資金および他の研究者の協力により、当初の予定より物品費と野外調査のための旅費を削減することができた。 (使用計画)次年度には備品および消耗品の購入および人件費、旅費などとして執行し、研究をさらに効率的に進める計画である。
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