2018 Fiscal Year Research-status Report
Clarification on changes in the growth pattern of coniferous canopy trees after temporarily blown strong winds
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18K05732
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
関 剛 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40353742)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 上層木 / 幹 / 伸長成長 / エゾマツ / トドマツ / 強風 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近年における極端な気象現象の増加が指摘される中で、台風、温帯低気圧等による一時的な強風が中長期的な将来に森林群落上層に対し及ぼす影響を検出することである。調査は、北海道の天然林で上層を形成するエゾマツ、トドマツにおける、強風の記録が多かった2004年前後の垂直・水平方向の伸長成長を対象とする。上記2樹種では、1)幹、枝が1年に1回、前年に伸長した部分の先端から伸長する、2)伸長部分の基部にはリング状の痕跡が残ることから、幹では過去30年程度の成長履歴を追跡できる。この性質を利用して、本年度はエゾマツの上層木に登って、過去における幹の伸長履歴を追跡した。調査で得たデータをトドマツの上層木で過去に得たデータと比較した。 北海道後志地域・中山峠付近の国有林を対象に、空中写真の画像を用いて予備的に調査候補個体の位置を調べた後、残雪期に現地で地上から双眼鏡を用いて幹・枝の成長状況を確認した。調査候補個体に対し、スリング、カラビナを一時的に幹に固定後、樹脂製のラダーを取り付け、樹木の先端付近に到達して幹の健全性を確認した。確認後、幹・枝の損傷の痕跡がない上層木11個体で1976年から2013年までの伸長成長について計測した。計測データと空中写真の画像から1976年の時点ですでに上層に達していたと判断したエゾマツ、トドマツそれぞれ5個体において、幹の伸長成長の年次間の変動を約30年間分について解析した。その結果、エゾマツでは幹の年間伸長成長量が計測対象前年の伸長量と正の相関を示す個体が多かったのに対し、トドマツでは相関を示さない個体が多かった。伸長成長量の長期的な変動では、2樹種の間に顕著な違いは見られなかった。年次間の変化でみると、エゾマツはトドマツと比べ、幹の伸長成長が徐々に変化することが示唆された。2004年の強風の影響については、現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題全体における進捗について、本年の調査での達成目標としていたエゾマツ上層木の幹における垂直方向の伸長成長のデータを得たことと、次年度以降の調査に向けて、調査対象の樹木の先端付近への到達がしやすいように調査環境を調整することができたことを、上記の区分の選択理由とする。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題2年目以降、針葉樹上層木の伸長成長で当初から着目している、過去における水平方向の伸長成長について、エゾマツの枝での計測を行う。エゾマツとトドマツにおける垂直方向・水平方向の伸長成長のデータがそろった段階で上記2方向の伸長成長を通じて各樹種における伸長成長の特徴、2004年の強風の影響等を解析する。 一般に幹・枝の伸長成長は光合成生産における葉の光条件に対して影響を及ぼすことから、エゾマツの枝の伸長成長を計測後、上記2樹種における枝上での針葉の分布、針葉の寿命などを調査する。幹・枝の伸長成長と針葉の分布等から、エゾマツ、トドマツの上層木が強風に対してどのような影響を受けやすいのかを解析・考察する。
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Causes of Carryover |
初年度の使用においてほぼ予定額を使用したが、物品購入予定額と実際の物品価格との間に差が生じたことから、次年度使用額が0より大きい値となった。
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