2022 Fiscal Year Research-status Report
環境指標生物としての地表徘徊性甲虫類の生活史戦略と飛翔形質の進化系列の関係
Project/Area Number |
18K05740
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渋谷 園実 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (50598232)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 健二 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30208954)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 飛翔形質 / 繁殖型 / 食性 / 解剖 / 生活史戦略 / 系統解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
地表徘徊性甲虫類(コウチュウ目オサムシ科)は、生息地の環境変化に鋭敏に反応することから、日本をはじめ世界で環境指標生物としてモニタリング調査がされている。それらの調査結果を一歩踏み込んで解釈していく上で、出現種の生態にもとづき種組成や個体数の変化のメカニズムを考察する必要があるが、地表徘徊性甲虫類の生態は、オサムシ亜科の一部の種を除いて充分な情報がない。 本研究ではこれまでに、広域に出現し捕獲頻度の高い汎用種において、生態の基礎データを構築すべく取り組んできた。 飛翔能力に付随するデータとしては後翅の形状と飛翔筋の有無を中心に行った。後翅形態の調査では、1)長翅型、2)短翅型、3)長翅・短翅個体が混在する翅二型、4)長翅・短翅・その中間個体が混在する翅多型、5)後翅の翅先が変異する後翅端変異型の種が存在することが現時点までに判明した。 次に食性(餌)に関しては消化管内容物の解剖と試薬検査を行い、繁殖期に関しては生殖器の成熟判定と蔵卵数の測定を行った。対象種は、当初予定していた36種から56種まで増やし、本研究の目的であった第一段階としてのデータとしては充分なものを得られた。 さらに、上記の種の遺伝子解析を行い、それぞれの種の系統関係を明らかにした。また、飛翔形質の進化(退化)と食性の進化過程を調べるため、祖先復元を行った。その結果、祖先種は飛翔能力があり、食性は肉食であったと推定された。どちらもそれぞれの族で独立に飛翔性や食性が進化し、すなわち異なった族で並行して見られる収束進化がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた種については、順調に推移し終了したが、追加で行った野外調査による地表徘徊性甲虫類の採集と、採集個体の解剖という一連の流れに後れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
追加で実施した野外調査は、ほぼ終了し、新型コロナの影響による遅れを取り戻しつつある。今後は、供試個体の解剖を行い、補完すべく必要なデータを取り揃え、最終解析を実施する。なお、誤同定が頻発する近縁種の数種についても、今後交尾器の解剖を進め、同定を確定し、遺伝子情報を登録する予定である。
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Causes of Carryover |
理由:新型コロナの影響により、追加で予定していた野外調査による地表徘徊性甲虫類の採集の延期と、欧州オサムシ学会(20th European Carabidologists Meeting)への参加を見送ったことに起因する。 使用計画:新型コロナの規制緩和に伴い、学会(昆虫学会、佐賀)へ参加し、これまでの集大成の内容を発表し、地方の地表徘徊性甲虫の研究者と情報を交換する。
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