2019 Fiscal Year Research-status Report
なぜヒノキは特定のジベレリンのみに花成応答するのか?
Project/Area Number |
18K05743
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
片畑 伸一郎 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (80648395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 晋也 静岡県農林技術研究所, 静岡県農林技術研究所, 上席研究員 (20502579)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 花成 / ジベレリン / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
着花促進を目的に一般的によく使用されているジベレリン3(GA3)に対するヒノキの花成応答性は低い。そのため、GA3に代わる新たな着花促進技術の開発が求められている。昨年度のヒノキのクローン系統である新城2号を対象にした研究結果から、ヒノキはGA4/7に対しては花成応答することが明らかになった。また、ヒノキのGA4/7に対する花成応答にはCoLFY遺伝子が関連していることも明らかにあった。しかしながら、昨年度はヒノキ1系統のみを対象にしているため、これらの結果がヒノキに対してどこまで普遍的かどうかは明らかになっていない。そこで今年度の研究では、GA4/7に対する花成応答の系統間差を明らかにすることを目的に研究を進めた。研究材料は静岡県西部育種場に植栽されている7系統のヒノキとした。 多くの系統において、GA4/7処理後約1か月で雄花の膨らみを目視で確認することができた。また、GA4/7に対する花成応答性には系統間差があり、久慈6号や小坂1号はGA4/7に対する花成応答性は低く、雄花の着花量も少ない傾向であった。一方、中10号や上松10号の花成応答性は高く、雄花の着花量も多かった。しかし、上松10号では、雄花の発達過程で枯れていく様子が観察された。 次にCoLFY遺伝子の発現量の系統間差を解析した。その結果、雄花着花量が多い中10号や上松10号などでは、CoLFY遺伝子の発現が大きく増加し、一方、雄花着花量が少なかった久慈6号ではCoLFYの発現の増加率は低くかった。これは昨年度の結果と概ね一致し、ヒノキの着花量とCoLFY遺伝子の発現量の関係には普遍性があることを示している。しかしながら、一部矛盾する結果もあることから、更なる解析が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GA4/7に対する花成応答の系統間差を明らかにするなど必要なデータは得られている。遺伝子発現やホルモン分析のデータがやや不足しているため、充実させる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
GA4/7に対する花成応答性の低い系統が存在しており、これらは小花粉の性質を強く保有している可能性がある。このような系統は積極的に利用していくべきだが、GA4/7に対する花成応答性が低いということは安定的な種子増産が難しいということを示している。そのため、GA4/7に代わる新たな着花促進技術を開発する必要がある。現在、ヒノキの水ストレスと花成応答の関係について検討している。
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Causes of Carryover |
遺伝子発現解析装置が故障したため、一部の発現解析ができなくなったために次年度に繰り越した。この装置は復旧済みである。
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