2020 Fiscal Year Research-status Report
鳥類の種子排泄と林分間移動から種子の時空間的分布を予測する:距離依存からの脱却
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18K05749
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
平田 令子 宮崎大学, 農学部, 准教授 (50755890)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 種子体内滞留時間 / メジロ / 種子サイズ / 鳥類サイズ / 乾果 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)鳥類の移動パターンの解明:林分境界において、鳥類が移動方向や速度を変えるきっかけとして、林相の違い(コントラストの違い)が関わっていることを明らかにすることができた。また、調査対象地の樹種と樹高を記録し、林分構造の違いが与える影響を解析することができた。それにより、特に、林冠高の低い林分への移動は、その構成樹種がスギなどの針葉樹であれば避けたりためらったりしたが、たとえ広葉樹であっても移動を避ける傾向があることを見出した。これにより、鳥類の移動に対して林冠高が一つの要因となっていることを明らかにできた。この傾向は、森林性鳥類種で顕著であった。 結実木での鳥類の採食行動を観察した結果、特にアカメガシワについては採食方法が丸飲みだけではなく、外種皮のみ摂食して種子はその場に落とす行動を取ることがあることが分かった。これにより、種子散布プロセスには丸飲みによって結実木から遠くに散布されるプロセスと、外種皮のみの摂食で結実木付近に散布されるプロセスの2パターンがあることが判明した。 (2)種子の体内滞留パターンの解明:小型鳥類(メジロ)の種子体内滞留時間を測定し、既存データ(シロハラ、ヒヨドリ)と比較することができた。また、種子サイズと滞留時間との間の関係が鳥種により異なることが示唆された。種子サイズや樹種のバリエーションを増やし、さらに測定回数を増やすこともでき、データの信頼性を高めることができた。 (3)プロセスモデルの構築:新たに取得した散布種子の時間的・空間的分布パターンデータを用いてモデルの改善を行った。 (4)種子散布予測:既往文献を参考にして、本研究で得られた課題(2)のデータを用いて種子サイズの違い(樹種の違い)が散布距離に与える影響を鳥種ごとに評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)鳥類の移動パターンの解明:林分境界において、鳥類が移動方向や速度を変えるきっかけとして、林相の違い(コントラストの違い)が関わっていることを明らかにすることができた。また、調査対象地の樹種と樹高を記録し、林分構造の違いが与える影響を解析することができた。それにより、特に、林冠高の低い林分への移動は、その構成樹種がスギなどの針葉樹であれば避けたりためらったりしたが、たとえ広葉樹であっても移動を避ける傾向があることを見出した。これにより、鳥類の移動に対して林冠高が一つの要因となっていることを明らかにできた。この傾向は、森林性鳥類種で顕著であった。 結実木での鳥類の採食行動を観察した結果、特にアカメガシワについては採食方法が丸飲みだけではなく、外種皮のみ摂食して種子はその場に落とす行動を取ることがあることが分かった。これにより、種子散布プロセスには丸飲みによって結実木から遠くに散布されるプロセスと、外種皮のみの摂食で結実木付近に散布されるプロセスの2パターンがあることが判明した。 (2)種子の体内滞留パターンの解明:小型鳥類(メジロ)の種子体内滞留時間を測定し、既存データ(シロハラ、ヒヨドリ)と比較することができた。また、種子サイズと滞留時間との間の関係が鳥種により異なることが示唆された。種子サイズや樹種のバリエーションを増やし、さらに測定回数を増やすこともでき、データの信頼性を高めることができた。 (3)プロセスモデルの構築:新たに取得した散布種子の時間的・空間的分布パターンデータを用いてモデルの改善を行った。 (4)種子散布予測:既往文献を参考にして、本研究で得られた課題(2)のデータを用いて種子サイズの違い(樹種の違い)が散布距離に与える影響を鳥種ごとに評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)鳥類の移動パターンの解明:引き続き、結実木での鳥類の採食行動を観察し、結実木上での滞在時間、飛来・飛翔方向を記録して鳥類の移動パターンを個体・単木レベルで分析 する。 (2)種子の体内滞留パターンの解明:種子サイズや鳥種(鳥サイズ)の違いが種子の体内滞留時間に与える影響について、統計分析を行う。また、メジロに関して、大型種子の体内滞留時間データが不足しているため引き続き採食実験を行う。 (3)プロセスモデルの構築:改善したモデルから、実際の種子散布パターンが距離依存ではないことが示されつつある。これを論文化して発表する。 (4)種子散布予測:課題(1)~(3)の結果をとりまとめる。田野フィールドを例にして、種子散布の及ぶ範囲・及ばない範囲を推定する。
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Causes of Carryover |
:当初は、2020年度に開催される予定の学会に参加し、当該研究成果を発表する計画としていた。そして、そのための旅費や参加費として使用する予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い学会開催が中止になったり、開催形式がオンラインとなり、現地への旅費が必要なくなったりしたため次年度使用額が生じた。 使用計画:翌年度分として請求した助成金は当初の計画通りに使用する予定である。次年度使用額分は、オンライン形式の学会発表に必要な消耗品費や、対面で実施された場合の旅費や参加費、新型コロナウイルス感染症対策で必要となる消耗品費に使用する予定である。また、研究とりまとめとして論文作成に必要な英文校閲費などにも使用する予定である。
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Research Products
(4 results)