2019 Fiscal Year Research-status Report
膜輸送メカニズムに基づく放射性セシウム低吸収きのこの作出
Project/Area Number |
18K05756
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
小松 雅史 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90737313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中沢 威人 京都大学, 農学研究科, 助教 (80608141)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | セシウム / きのこ / カリウム |
Outline of Annual Research Achievements |
広域で採取された野生きのこの放射性セシウム濃度データを整理し、種ごとの濃度特性を解析した結果、同じ環境で採取された場合であっても種によって放射性セシウム濃度は最大で100倍程度異なることが示された。特にスギタケ属の種は同属でも野外環境では種によって濃度が大きく異なった。 そこで濃度の種間差が菌糸の分布域などの生態的な特性によるのか、それとも培地からの吸収能力といった生理的な特性によるのかを明らかにするため、安定同位体Csを添加した液体培地でスギタケ属菌株の菌糸体を培養し、Cs濃度を測定した。その結果、ナメコで最もCs濃度が高く、野外条件で高濃度の137Csが検出されるチャナメツムタケについては、むしろCs濃度が低い、という結果が得られた。このため、培養菌糸体のCs吸収能は野外での種間差を説明しないことが示された。 同族元素のKやRbの濃度とCs濃度を比較したところ、KとCsの相関係数は低い(R^2=0.08)が、RbとCsの間に正の相関が認められた(R^2=0.86)。このため今回用いた種や菌株において、菌体のCs吸収はRbと似たメカニズムで行われていることが示唆された。また、昨年度の試験で菌体のCsとK吸収に拮抗作用があることが示されたが、CsとKの吸収メカニズムは同一ではないと考えられた。 セシウム添加/非添加培地で培養したウシグソヒトヨタケ菌糸体についてRNAを抽出し、RNA量の網羅的解析を行った。詳細な結果は現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
培養菌体でのセシウム吸収能の違いを示す、またRNA-seqによる解析を実施するなどの目標は実施されている。一方で、RNA-seqを用いた候補遺伝子の探索までは至っていないため、やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
菌株や種の濃度差が認められた条件(例:ナメコとチャナメツムタケ)について普遍性の確認やさらなる探索を行うため、培養菌糸体のCs濃度のスクリーニングを継続する。一方で、菌糸体での濃度差が顕著に認められていないことから、菌糸体から子実体へのCs転流の差が菌株や種の濃度差にも影響している可能性が考えられた。そこで子実体形成実験を行い、菌糸体と子実体のCs濃度の比較を行う。可能であれば液体培地での形成を検討する。RNA-seqの結果から候補遺伝子を抽出し組み換え実験を行う。
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Causes of Carryover |
RNA-seqの試験を複数回行う予定であったが、今年度の実験は一回とし、 次年度でRNA-seqの試験や組み替えの試験に予算を振り当てることにした。
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