2019 Fiscal Year Research-status Report
光・電子相関顕微鏡法による木材細胞壁多糖類の網羅的局在解析
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18K05760
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
粟野 達也 京都大学, 農学研究科, 助教 (40324660)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 放射柔細胞 / プロテクティブレイヤー / キシラン / ラムノガラクツロナンI / 網羅的免疫標識 / 96穴マルチプレート / 円形カバーガラス |
Outline of Annual Research Achievements |
広葉樹材の放射柔細胞は他の構成要素とは異なる機能を有しており、細胞壁の構造や組成が異なる。リグニンおよび多糖類分布の報告はあるが、非セルロース性多糖類や糖タンパク質の分布は明らかではない。そこで、38種のモノクローナル抗体を用いた免疫金標識・透過電子顕微鏡法によりポプラ放射柔細胞壁での非セルロース性多糖類の分布を観察した。 その結果,一部の抗体では前年度の免疫蛍光標識の結果と一致しないものもあったが,概ね前年度の結果と同様に,ペクチンに関しては、アラビナン、アラビノガラクタンおよびラムノガラクツロナンIの標識が細胞壁最内層と壁孔膜に見られた。細胞壁最内層におけるペクチンおよび糖タンパク質は接触細胞に存在するプロテクティブレイヤーと関係があると考えられる。ヘミセルロースに関しては、キシラン、マンナンの標識が二次壁で見られた。一方、キシログルカンの標識は複合細胞間層と壁孔膜部に見られた。ヘミセルロースの標識は放射柔細胞間で違いがなかった。 ヘミセルロース標識の分布は木部繊維と共通しているが、ペクチンおよび糖タンパク質標識の分布は木部繊維と異なっており、ペクチンおよび糖タンパク質は放射柔細胞の機能と何か関係があると考えられる。 マルチプレートシステムによる網羅的解析のため,以下の改良を試みている。スライドガラスを挟み込むマルチプレートの改良を試みた。96穴プレートのサイズにスライドガラス4枚を保持する場合,ネジによる圧着が不十分となり,液漏れすることが明らかになった。保持できるスライドガラスを3枚に減じ,ネジの本数を増やすことで圧着性を向上させた。また,汎用の96穴マルチプレートに切片を載せた直径5mmの円形カバーガラスを落とし込み,通常のELISA方と同様に免疫標識を行うことを試みた。切片剥離防止処理(MASコート)をした円形カバーガラスを特注した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多数の免疫標識切片を網羅的に観察することを目的に、スライドガラスをマクロプレートシステムで使用するためのアダプタを試作した。スライドガラス4枚を装着でき自動洗浄機に対応した96穴プレートでは液漏れが発生し、免疫標識に使用することができなかった。ネジの間隔が広い部分で液漏れすることが明らかになった。そこで,装着できるスライドガラスを3枚に減じ,ネジを増量することでスライドガラスを均一に圧着できるアダプタを新たに設計した。 また,上記アダプタがうまく動作しない場合を考慮し,汎用の96穴マイクロプレートに円形カバーガラスを落とし込み,通常のELISA法と同様に免疫標識を行うことを検討した。直径5mmの切片剥離防止処理(MASコート)カバーガラスを特注で設計した。現在マイクロプレートウォッシャーで問題なく使用できるかどうか確認中である。 上記と並行して、免疫金標識・透過電子顕微鏡法で広葉樹材の放射柔細胞における非セルロース性多糖類および糖タンパク質の免疫局在を網羅的に観察した。その結果、ヘミセルロース標識の分布は木部繊維と共通しているが、ペクチンおよび糖タンパク質標識の分布は木部繊維と異なっていることが明らかとなり、ペクチンおよび糖タンパク質は放射柔細胞の機能と何か関係があると考察した。しかし,一部の抗体では前年度の免疫蛍光標識の結果と異なる観察結果を示すものも存在した。これは用いた二次抗体が異なることが原因と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画では、スライドガラス4枚を96穴マクロプレートシステムで使用するためのアダプタを作製する予定であったが、96穴プレートでは液漏れが発生し、免疫標識に使用することができなかった。そのため、マルチチャンネルピペットや自動洗浄機に対応した、スライドガラス3枚を装着できる穴数を減じたプレートへの改良を試みている。 上記アダプタがうまく作動しない場合に備え、切片剥離防止処理を施した直径5mmのカバーガラスを作製し,汎用の96穴マルチプレートに落とし込んで通常のELISA法と同様に免疫標識を行うことを試みる。 放射柔細胞における非セルロース性多糖類および糖タンパク質の免疫標識の結果、蛍光顕微鏡での蛍光標識の局在と電子顕微鏡での金コロイド標識の局在が異なる場合があった。これは蛍光標識二次抗体と金コロイド標識二次抗体のサイズの違いに起因する可能性がある。金標識二次抗体のサイズを極力蛍光標識二次抗体のサイズに近づけるため、ナノゴールド(1.4nmの金粒子)標識二次抗体の利用を検討する。
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Causes of Carryover |
当初計画で予定していたマイクロプレートシステムの作製が遅延しており、十分な回数免疫標識実験を行うことができなかった。またそれに伴い、使用予定であった抗体試薬の購入およびスライドガラス用FESEM試料ホルダの特注作製を見合わせたため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、マイクロプレートシステムの改良経費、抗体試薬の購入、スライドガラスおよびカバーガラス用FESEM試料ホルダの特注作製費用に充てる。
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