2018 Fiscal Year Research-status Report
重水トレーサーによる樹木通水ネットワークの非破壊解析
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18K05765
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
内海 泰弘 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50346839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香川 聡 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40353635)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 重水 / 酸性フクシン / ヤナギ |
Outline of Annual Research Achievements |
樹木の水利用様式を規定する木部通水経路の解析は世界中で長年にわたり行われてきた. しかし,従来のほとんど全ての実験系では樹木の幹を切断した後,染料を含む様々なトレーサーを 2 年輪目以降の木部を含む樹幹切断面全体から取り込ませ,トレーサーの木部内分布解析から複数年輪にわたる通水経路を特定している.しかし,樹木全体の実際の通水ネットワークを俯瞰すると,樹幹の 2 年輪目以降の木部が直接外部の水と接続することはないため,当年に形成された根から取り込まれた水は最外年輪の木部を経由してより内部の木部に移動することになる.そのため,既往の研究手法で推定されている樹幹の通水経路は,樹木個体内での実際の通水経路と異なる可能性がある. そこで本研究では水と同じ挙動を示す重水をトレーサーとして破壊処理を行わず当年根から取り込ませ,樹木の根から葉に至る通水ネットワークの全体像を世界で初めて非破壊的に明らかにすることを目的とし,通水機能評価実験系に適する樹木の網羅的探索と実験条件の検討を行った. 既往の報告で挿し木の発根性が良好とされているヤナギ属を含むいくつかの樹種の試料を採取し,発根処理を行った後にポットに植栽し,生育条件を検討した.その結果,ヤナギ属の種において根の発達が顕著に認められた.次にヤナギ属の種を用いて実験系を確立することとし,水の移動部位を組織レベルで明らかにするために,先行研究で使用例がある酸性フクシンをトレーサーとして吸引させたところ,当年根から酸性フクシンを取り込ませた場合と木部横断面から酸性フクシンを取り込ませた試料では染料の上昇経路が大きく異なることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では当年根に限定した吸水を実施するための実験系が必要であり,それを確立するための樹種選択が重要となる.2018年度にはいくつかの樹種を検討した中で,ヤナギ属の種において根の発達が顕著に認められた. そこでヤナギ属の種を用いて当年根のからの水移動経路を明らかにするため,解析が重水と比較して容易で,既往の論文でも多くの利用実績がある酸性フクシン水溶液を吸引させる実験を行ったところ,当年根から酸性フクシンを取り込ませた場合と木部横断面から酸性フクシンを取り込ませた試料では染料の上昇経路が大きく異なることが示され,従来の染色液を用いた手法による通水経路の評価は,個体の実際の通水経路から異なる可能性が明らかになった.以上の結果は第69回日本木材学会大会で発表した.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は2018年度に確立した当年根を識別可能にする供試木の生育法によりヤナギ属の種を育成し,成長期間中に当年根から重水を取り込ませる試験を実施する.重水が取り込まれたと想定される個体の樹幹と根を用いて重水が検出可能なサンプルサイズや実験条件の検討を行った後,重水の樹体内分布の解析を行う.
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Causes of Carryover |
予備試験に用いた重水を購入する際に残額が生じた.この残額は次年度に試験で用いる重水の購入のために使用する予定である.
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Research Products
(1 results)