2018 Fiscal Year Research-status Report
中・大規模木造建築物における接合部の長期性能の解明
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18K05773
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Research Institution | Miyazaki Prefectural Wood Utilization Research Center |
Principal Investigator |
中谷 誠 宮崎県木材利用技術センター, その他部局等, 研究員 (90433143)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 圭 大分大学, 理工学部, 准教授 (00325698)
森 拓郎 広島大学, 工学研究科, 准教授 (00335225)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | LSB / GIR / 長期性能 / クリープ / DOL |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、長期間安全に使用できることが求められる中・大規模木造建築物において、研究事例の極めて少ない接合部の長期性能の解明を目的としている。研究対象の接合具は、中・大規模木造建築物の接合部において使用実績が多く、研究代表者と研究分担者による基礎的な研究事例の多い大型のネジ接合具であるラグスクリューボルト(以下、LSB)及び接着剤と全ネジボルトを用いたグルードインロッド(以下、GIR)とした。本年度の研究では、長期的な引張変形量の増大を推定するクリープ試験、そして長期的な引張耐力を推定するDOL試験を実施した。 本研究期間では、クリープ試験において長期荷重に相当する荷重を試験体に負荷し、6ヶ月間の引張変形量の変動を測定した。その結果、50年後の推定変形量がLSBでは0.2mm、GIRでは0.7mm程度と極めて微少であることが分かった。このため、接合部及び建物の安全性に大きく影響を及ぼさないと考えられる。ただし、湿度の影響を受けて変位量が±0.1mmの範囲で変動することが分かった。本年度の試験では高湿度になる梅雨時期に試験していないことから、次年度以降も試験を継続して、一年間を通した変位量の変動を測定する。DOL試験に関して、全体的な傾向として、木材自体の長期的な強度特性と同様の傾向を示すことが分かった。しかしながら、現時点では試験体数が少なく、事前の強度測定試験における最大破壊荷重に対して90%の荷重で負荷した試験において、載荷直後に破壊を生じる試験体が見られたことから、今後更なる試験データの蓄積が必要であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画していた試験を含めて、研究はおおむね順調に進んでいる。本年度は初年度ということもあり、試験体と試験設備の準備に半年ほど時間を要すると考えていたが、7月までに全ての試験体及び試験用治具を準備することができ、8月にメインの長期試験(クリープ試験及びDOL試験)を開始することができた。当初の研究計画では、長期試験は10月開始を想定していたが、2ヶ月間程度前倒しで開始できている。 長期試験はおおむね順調に進めているが、一部に想定外の課題が生じている。本研究で対象としている大型のネジ接合具であるラグスクリューボルト(以下、LSB)と全ネジボルトと接着材を用いたグルードインロッド(以下、GIR)ともに、長期的な引張変形量の変動を測定しているクリープ試験では、試験開始直後から木材自体の試験では見られない湿度による変位量の変動が認められた。この原因解明のため、当初計画していなかった試験体を追加して試験を行っている。長期的な接合耐力の変動を検討しているDOL試験では、試験で負荷する荷重レベルが、試験体の実際の荷重レベルと隔たりがあることで、破壊までの測定時間に大きなバラツキが生じている。これは、マッチング試験と長期試験には同一材料(1本の集成材)から採取した試験体を用いているにもかかわらず、局所的な材質の影響を受けやすい接合部試験の特性が原因であると思われる。そこで本研究では、マッチング試験体3体のバラツキが大きい材料を試験体から省くこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の研究計画について、3年間の研究期間のうち初年度を終え、ほぼ当初の計画通りに研究を進められていることから、2年目以降もこれまでの計画通りに研究を進める。本研究では、本年度以降3つの試験(「クリープ試験」、「DOL試験」、「クリープ関数を用いた新たな試験」)を計画しており、各試験の具体的な内容は以下の通りである。 長期的な引張変形量の増大を測定している「クリープ試験」は、初年度に開始した試験を今後も継続することで、より長期間のデータを収集する。そして、初年度の試験結果より、湿度の影響による変形量の変動が明らかになったことから、2年目は初年度測定できなかった梅雨時期における高湿度条件での変位量の変動について考察を行う。 長期的な引張耐力を推定する「DOL試験」では、マッチング試験体3体の平均引張破壊強度をもとに、その90%、80%、70%の荷重を試験体に負荷して破壊までの時間を測定している。これまでに全60体中10体の試験を終えており、再来年度の前期までに全ての試験を終える計画である。 再来年度に試験開始予定である「クリープ関数を用いた新たな試験」に関する研究は、再来年度迅速に試験がスタートできるよう、来年度中に試験体及び試験装置の準備を行う。
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Research Products
(1 results)