2018 Fiscal Year Research-status Report
コンブの効率的早期種苗生産に向けた養殖株と保存株を用いた葉体成熟制御技術の確立
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18K05774
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
四ツ倉 典滋 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (60312344)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 雅範 地方独立行政法人青森県産業技術センター, 水産部門, 部長 (90557951)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | コンブ養殖 / 成熟誘導 / 種苗生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
既存のマコンブ培養株を用いて、青森県産業技術センター水産総合研究所にある屋内水槽(1.5m3角型(1m×3m×0.5m))における葉体の成熟誘導を試みたところ、水温:15℃、水量:500L/毎時のかけ流し、光量:6,000-8,000Lux、光周期:短日(9hL-15hD)の培養条件で葉面の裏と表に子嚢班の形成が認められ、活発な動きを示す遊走子の放出も確認できた。そこで、戸井町小安から採取したマコンブの成熟個体(先端一部に子嚢班形成)と未成熟個体(なお、これらについて形態的な違いは、t検定による解析で有意差は得られず、幾つかのDNA領域の塩基配列比較においても相違は認められなかった)について、7月25日から上記条件で水槽培養をはじめたところ、成熟個体では2週間後に、未成熟個体では2-3週間後に子嚢班の形成が認められ、成熟部位が前面に広がる過程でそれぞれの葉面に占める子嚢班の形成割合を測ることができた。その後、8月28日には得られた成熟個体を用いて種苗糸(100mのクレモナ糸)の生産を行い、2018年における戸井漁業協同組合小安支所での養殖用マコンブの種苗生産開始は9月29日であったことから、それよりも約一ヶ月早く種苗生産を行うことができた。そして、作出した種苗糸を戸井漁協の種苗生産施設で培養し、11月4日(現場水温が20℃を切り始めた時期)と11月20日(慣行栽培より少し遅い時期)の2回に分けて沖出しを行い、現在までそれぞれの葉体の生長を観察し続けており、これまでのところ、水温が20℃を切るタイミングでの種苗糸の沖出しは発芽体の生長が鈍くなることが示されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、実海域における未成熟個体の成熟誘導を試みたが、時化により施設が破損し、満足なデータを得ることができなかった。また、春期から夏期の天候不順による漁業者の作業量増加(天日干しができず、昆布乾燥機を使用するため)にともない、作業船の利用が制限され、定期的な環境データの取得が困難であったが、屋内水槽を用いたコンブ葉体の成熟誘導と誘導株を用いた早期種苗生産、そして養殖現場における種苗糸の沖出しが計画よりも進展し、総合的に順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
海上における定期的な環境・生長データの取得は、自然環境の影響を受けそれなりの困難も予想されるが、引き続き作業補助の大学院生と、現場作業の協力をお願いする漁業協同組合職員と漁業者のサポートのもとで、計画的・効率的に研究を推進する。前年度取り残したデータの穴埋めを行うとともに、前年度計画以上に進んだ内容については再現性の確保に努める。なお、分子解析については、研究予算上タンパク質情報の取得が難しいことから、遺伝子情報の取得に努め、また、養殖試験においても現場関係者と密に連絡を取りながら効率的・効果的に研究が進められるようにする。
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