2019 Fiscal Year Research-status Report
コンブの効率的早期種苗生産に向けた養殖株と保存株を用いた葉体成熟制御技術の確立
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18K05774
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
四ツ倉 典滋 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (60312344)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 雅範 地方独立行政法人青森県産業技術センター, 水産部門, 部長 (90557951)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | コンブ養殖 / 成熟誘導 / 種苗生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の沖出し葉体を対象に、4/21と5/23に形態比較を行ったところ、沖出し個体は慣行栽培個体に比べて生長に優位性は認められなかったが、前年度の観察から4/21までの相対生長率は調査した全ての形態パラメーター(全長、葉長、葉幅、葉厚)について早期沖出し個体で高く、4/21から5/23の間でもその値は葉厚以外について高かった。 一方、天然海域の深所に設置した施設に未成熟個体を垂下して成熟誘導を試みたところ(7/20)、9/4においても葉面のうら側に形成された子嚢班の占有割合は0.52-1.54%に留まり、活発な遊走子の放出は見られなかった。また、前年に続き屋内水槽による成熟誘導を、マコンブに加えてリシリコンブとオニコンブについて試みたところ(6月および7月に採集した未成熟個体)、それぞれ培養開始から21日後、16日後、28日後に葉面の両側に子嚢班形成が認められた。特に、オニコンブについては葉状部全体の両面で成熟は進行し、天然母藻に匹敵する子嚢班占有割合を示した。それらについて単離遊走子を用いて種苗糸を作成し、それぞれ11/4(利尻富士)、11/7(羅臼)、11/27(戸井)に沖出しを行い、観察を継続している。 更に、早期生産種苗の沖出し時期と、その沖出しのための栽培条件を検討するため、葉長約1cmに育てた胞子体を種苗として光強度条件と水温条件を変化させて培養し、生長比較を行った。その結果、①低光強度条件(35μmol photons m-2 s-1)や②段階的に光強度を上げた条件(35→100μmol photons m-2 s-1)に比べて③高光強度条件(100μmol photons m-2 s-1)で培養を続けたものほど何れの温度条件でも葉長と葉幅は概ね大きな値を示した。特に、高水温下(段階的に21℃から19℃に調節)では、③は①や②と比べて大きな生長差が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に時化のため施設が破損してデータを得ることができなかった天然海域における成熟誘導実験は無事に成果を上げることができた。また、養殖現場における種苗糸の沖出しは継続して続けられ、前年の不足を補うことができている。なお、昨年に続き、天候不良や天然コンブ資源の減少により、現地(函館市戸井町)協力漁業者の作業量増加に伴う一部フィールド作業の遅れがあるため、利尻富士町と羅臼町の漁業者の協力を仰ぐことでデータ収集を行っており、総合的に順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の社会状況を踏まえ、先ずは屋内実験による保存株を用いた種苗生産に係るデータの蓄積を進める予定である。一方、屋外のフィールド作業については、現状、現地への訪問が制限されることが予想されるため、現地の漁業協同組合職員と漁業者(函館市戸井町・利尻富士町・羅臼町)に一層の協力を求め、これまでの取り組みを無駄なく成果に繋げることができるよう、効率的・効果的なデータの収集に努めていく。そして、次年度が本研究の最終年度になっていることから、データの不足を適切に補うとともに結果を総合的に解析し、産業の現場で有益な成果が示せるよう研究を推進していくつもりである。
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