2018 Fiscal Year Research-status Report
Systematic assessment of worldwide marine stock enhancement and sea ranching programs
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18K05781
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
北田 修一 東京海洋大学, 学術研究院, 名誉教授 (10262338)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱崎 活幸 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (90377078)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 種苗放流効果 / 経済効果 / 生態的影響 / 遺伝的影響 / 遺伝的多様性 / フィットネス / マダイ |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、先ず、①世界の種苗放流プログラムの効果と野生集団への影響研究を総括することを目的に、文献調査及び公開データのメタ解析を組み合わせたシステマティックレビューを行い、以下のことを明らかにした。 世界の20以上の国で180種を超えるサケ属魚類及び海産魚介類が放流されており、養殖はアジアを中心に地中海をはじめとして世界の広い範囲に広がっている。しかし、いくつかの成功例を除き、放流事業のほとんどは経済的に成立していないか、または評価されていない。放流数が資源加入量に比べて小さい場合、放流効果は資源変動に埋没する。餌生物の競合による密度依存成長は顕著で、放流量が環境収容力を超えた場合は、放流個体、野生個体及び競合他種の成長が同時に低下する。人工種苗の繁殖成功度は、種、種苗性、環境要素に依存して変化する。孵化場からの遺伝子流動は顕著で、放流集団の遺伝的多様性や集団構造を変化させたが、集団の適応度低下は観測されていない。これにより、初めて種苗放流の効果と野生集団への生態的・遺伝的影響の世界の鳥観図が得られた。 併せて、世界の事例の中から、②代表的な長期大量放流事例として鹿児島湾のマダイの放流事業を取り上げ、放流効果と野生集団への遺伝的影響を評価した。2002年から2011年までに収集した魚体標本642個体のマイクロサテライト及びミトコンドリアDNAの遺伝子型を実験で取得するとともに、40年にわたる漁獲、放流、環境データを解析した。種苗放流は遺伝的多様性を減少させたが、それは野生集団の増加とともにその影響は回復に転じた。一方、放流種苗の適応度は世代あたり14%低下し、1990年には84%を記録した湾内での放流魚の割合は1%に減少した。野生集団の増加は、漁獲努力量の減少と藻場の増加によるものであり、養殖場からの遺伝的影響は種苗放流のそれより小さかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記①の結果を論文にとりまとめ、国際誌Fish and Fisheries(IF 6.99)に投稿し、2018年5月に出版された。2019年3月現在、すでに6回引用されている。 上記②の結果についても論文にとりまとめ、国際誌Scientific Reports(IF 4.12)に投稿し、2019年3月に出版された。 以上のように、当初の計画以上に大幅に研究が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、水産増養殖が野性集団に及ぼす遺伝的影響について、世界の現状を評価する。上の①で得られた文献情報に加え、“captive breeding”, “genetic effects”, “microsatellites”, “population structure” 及び種名をキーワードにGoogle Scholor文献検索システム等を用いて、文献を収集する。この他、既知の文献と公開データをインターネットで検索する。これらの研究から、マイクロサテライト遺伝子型データが利用できるもの、及び、グローバルFST またはヘテロ接合度が報告されているものをデータとして使用する。ここで、マイクロサテライトに焦点を絞るのは、遺伝マーカーの中では最も多くの海産魚介類で研究事例が多いと期待されるからである。これらの遺伝子情報に基づき、世界の主要な水産増養殖プログラム下にある野生集団の遺伝的多様性を相対的に評価する。研究結果を論文にまとめ、早い時期に、国際誌に投稿し、2019年度内の出版を目指す。 これまでに開発した水産増殖の評価と集団遺伝に関する方法論をとりまとめ、日本語で出版する。また、昨年に引き続き、両側回遊する小エビ類の塩分と水温への応答実験を行い、海洋生物の環境適応のメカニズムの理解に資する。 2020年度は、積み残しの課題を整理するとともに、社会への発信に重点を置く。いくつかの課題は、論文化に発展するかもしれない。
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Remarks |
長年の親交があるRobin S. Waples博士は、集団遺伝学及びサケ・海産種の種苗放流及び保全生物学の著名な学者で、理論と実データの解析で多くの業績を残されている。2018年11月には、Molecular Ecology Prize(国際分子生態学賞)を受賞されている。本科研費プロジェクトでは、論文の共著者として科学的内容と英文について校閲をお願いしている(予算の配分は行っていない)。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Rigorous monitoring of a large-scale marine stock enhancement program demonstrates the need for comprehensive management of fisheries and nursery habitat2019
Author(s)
Kitada, S., Nakajima, K., Hamasaki, K., Shishidou, H., Waples, R. S., & Kishino, H.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 9
Pages: 5292
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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