2020 Fiscal Year Research-status Report
Systematic assessment of worldwide marine stock enhancement and sea ranching programs
Project/Area Number |
18K05781
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
北田 修一 東京海洋大学, 学術研究院, 名誉教授 (10262338)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱崎 活幸 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (90377078)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | サケ / 回帰率低下 / 孵化場 / 遺伝的影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,シロザケ(以下,サケ)の急減要因のメカニズム解明と資源回復方策の検証を目的とした。 ① マイクロサテライトデータから、集団構造を推定した。アメリカ大陸側は、アラスカ、ユーコン、アラスカ半島、南東アラスカ、ブリティッシュコロンビア/ワシントン、アジア側では、ロシア及び日本/韓国の7つのグループにまとまった。日本/韓国は、最も分化した集団であり、日本/韓国からロシア、アラスカ半島へのadmixtureが推定された。 ② マイクロサテライト及びSNPの対立遺伝子頻度を統合し、北太平洋全体の遺伝子データを解析した。中立な集団構造を超えて,日本で有意に分化する5遺伝子を検出した。mtDNA3は呼吸,エネルギー代謝、運動能力に,GnRH373はゴナドトロピン放出ホルモンで繁殖や回帰能力に関連しており,U502241は免疫応答に関連している。ras1362は細胞成長、TCP-1は精子活性に関連している。これらの結果とサケの適応度との関連について考察した。 ③ 1996年~2019年のサケの回帰数と日本沿岸の年平均表面水温(SST)の時系列データを季節別に解析した。回帰年の2~5年前の夏(7~9月)の平均SSTは回帰数と有意な強い負の相関をもち (r=-0.69),回帰数減少の変動の48%を説明した。回帰年の春及び夏のSST と回帰数には有意な負の相関があったがその原因は不明である。回帰年の秋と冬の水温上昇は回帰数に負の影響を与えない一方,夏季の水温上昇は降海した稚魚の生残率を低下させている可能性が示唆された。 ④ 提案されている孵化場と自然産卵場のゾーニング(分離)及び自然産卵促進による資源回復方策について,放流及び漁獲データのメタ解析により検討した。北太平洋の14地域での孵化場魚の割合とPNIを推定したところ,推奨されているPNI>0.5の範囲にあり,資源量が増加したのはロシアの大陸及び島嶼部のみであった。生産現場への推奨には、さらなる研究が必要であると結論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度に得られた結果を原著論文として取り纏め,国際誌及び和文誌に投稿した。いずれも,現在審査中である。① サケの急減要因の遺伝的メカニズムの推測(Evolutionary Applications)、② サケ回帰数と日本沿岸SSTの関係(日本水産学会誌) なお、2018年-2020年の間、 ③ 世界の種苗放流の経済効果と遺伝的・生態的影響のレビュー (Fish and Fisheries (2018), 19(3), 511 - 532)、④ 鹿児島湾のマダイ放流の結果(Scientific Reports (2019) 9, 5290)、⑤ 日本の種苗放流についてのレビュー(Reviews in Aquaculture (2020) 12(3), 1944 - 1969)が出版されている。以上のように,当初の計画以上に大幅に研究が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,上記論文の出版を目指す。 本研究で得られた研究成果の社会への発信に努める。
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Causes of Carryover |
本プロジェクトは2020年度が最終年度であったが,2編の論文が2021年3月時点で審査中であったため,残額を2021年度に繰り越す申請を行い,認められた。2021年度は,これら論文の出版を目指す。繰り越した助成金は,出版経費に使用する計画である。
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Research Products
(5 results)