2018 Fiscal Year Research-status Report
特定外来生物コクチバスの本邦河川における影響評価と駆除技術の開発
Project/Area Number |
18K05783
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
淀 太我 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (00378324)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 特定外来生物 / コクチバス / 環境DNA分析 / 採捕調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
調査対象河川である雲出川におけるコクチバスの分布範囲を把握するため,16地点での魚類採捕調査と,9地点での環境DNA分析を実施した。採捕調査では,中流域に設置されている堰堤直下を最上流として,6地点中2地点からコクチバスが採捕され,それより上流の10地点からはコクチバスは採捕されなかった。採捕調査において採集されたコクチバスは,成魚は2地点において各4個体の8個体のみにとどまった。一方,仔稚魚については,下流の1地点において5月に142個体,上流地点において6月に702個体を採集し,上流地点では6月にコクチバス卵も採集した。環境DNA分析においては,コクチバスに対する種特異的分析(RT-PCR分析)および魚類全体を対象とした網羅的解析(メタバーコーディング分析)の両方において,2支流に各々存在する2つのダム湖および大仰石橋頭首工より上流の6地点からコクチバスは検出されず,採捕調査でも確認済みの1地点からのみ検出された。これらのうち4地点においては各地点3サンプルを採水して分析したが,サンプル間で結果は同一であり,残る5地点は各地点1サンプルの分析とした。これらや過去の知見から,現状ではコクチバスは大仰石橋頭首工を上限として,淡水域に広く分布していると考えられた。 また,コクチバスの繁殖時期推測のため,水温ロガーを7地点に設置した。このうち4地点はコクチバス分布範囲内の地点であり,3地点はより上流およびダム湖のコクチバス未侵入範囲の地点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採捕調査と環境DNA分析の結果が完全に整合し,コクチバスの分布範囲を高い精度で把握することができた。また,繁殖場所および繁殖時期の推定のための仔稚魚については一定数が採集されたが,日数が限定的であり,より推定期間を通した採集が必要である。ただし,今年度よりコクチバスの胃内容物分析を開始予定であったが,採捕個体数が8個体と少なく,成果を得るまでには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
繁殖時期および繁殖場所の把握について,当初より予想していたとおり,繁殖時期と水田の水入れ時期が重複することから,濁水が河川に流入し,産卵床目視での把握が困難であった。そのため,本計画にある仔稚魚の採集と耳石日周輪からの孵化日逆算が有効と考えられるため,より頻繁な採捕調査を行う。また,コクチバス成魚の採捕が芳しくなく,その要因として河川規模の大きさや流量の多さから,投網等の網漁具による漁獲効率が悪いことが挙げられる。今後は釣りなど多面的な採集方法を検討する。また,コクチバスの生息範囲が明らかになったことから,適切な定点を設置して安定同位体比分析による食物網分析を行う。
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Causes of Carryover |
本科研費課題で購入予定であった局所排気装置について,別途導入されたため支出不要となったことが主な理由である。これらについては,環境DNAの分析点数を増やしてより正確なコクチバス生息範囲や魚類相の把握を行うとともに,今年度8個体しか採集されなかったコクチバス成魚の採捕数を増やすため,漁具の購入や調査回数の増加に充てることを計画している。
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