2018 Fiscal Year Research-status Report
高精度バイオテレメトリーによるイセエビの人工種苗と天然種苗の逸散過程の比較
Project/Area Number |
18K05784
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
荒井 修亮 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (20252497)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 日周性 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】昨年度の調査によってイセエビの人工、天然種苗の天然海域における日周性の差異が示唆された。種苗の飼育では午前中に給餌を行っている。これがイセエビ本来の夜行性に影響したことが推察される。本研究は、午前給餌と夕方給餌の両実験区で飼育した稚エビの日周性を、飼育下と天然海域へ放流した後のテレメトリー調査とで比較した。 【方法】室内実験を三重県水産研究所で2018年10月9日~10月30日に行った。午前給餌人工4尾(頭胸甲長58.6±6.5 mm、体重188.5±69.1 g)、午前給餌天然10尾(55.2±5.2 mm、 148.0±29.3 g)、夕方給餌天然10尾(55.4±5.7 mm、156.5±46.5 g)を、シェルターを設置した水槽内で個別に飼育し、監視カメラで録画した。さらに上記稚エビの放流追跡を三重県志摩市の地先で2018年10月31日~12月26日に行った。超音波受信機(VR2W-180 kHz、Vemco社)を深さ6~10 mの海底に、一辺が約100 mの正六角形の頂点に6台、中心に1台の計7台設置した。室内実験を行った供試個体の頭胸甲に発信機(V5-1H、同社)をエポキシ接着剤で装着した後, ダイバーによって中心の受信機近くに設置された魚礁へ人工4尾(午前4尾)、天然19尾(午前9尾、午後10尾)を放流した。 【結果】飼育実験では、全ての試験区でシェルター外滞在時間は夜間が有意に長かった。テレメトリー調査の結果、3日以上放流地点付近に滞在していた個体の内7尾(人工3/4尾、天然4/4尾)は昼間より夜間の方が岩場の隙間などから出ている時間が長かった。この結果から、給餌時刻は日周性に影響を与えず、天然、人工ともに夜行性を示した。調査期間を通して受信範囲内に滞在した個体は、人工で4 尾中3尾、天然で19尾中3尾と、人工の魚礁への定着性がより高いことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
飼育下におけるイセエビ種苗の行動観察を行うにあたって、当初はビデオカメラによる映像撮影を行うことを想定していた。ところが、今回の研究においては、「監視カメラ」を導入することによって、複数個のカメラを同時にハードディスクに長時間記憶させることが可能となり、非常に効率的に行動観察が行えた。また、その画像解析においても画像処理ソフトを活用することによって、人間による目視観察以上の効率的な処理が可能となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度の放流追跡実験においては、日周性を示唆するデータを得ることができた。加えて、最終的に種苗が受信範囲から出ていく方向に一定の傾向があることまでは計測することに成功した。しかし、受信範囲から何処へ向かったのか、また、天然種苗の移動については、帰巣性があるのかどうかなど不明である。このため、今年度については、昨年度と同様に室内での監視カメラによる行動計測に加えて、放流海域での広域な移動を計測することを目的に受信機の台数を増やすこと、設置場所を移動方向を想定して検討を行うこと、ならびに天然種苗の捕獲地点の聞き取り調査を行いたい。
|
Research Products
(2 results)