2019 Fiscal Year Research-status Report
Evolution of multiple sperm storage organs in Ommastrephidae
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18K05786
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
佐藤 成祥 東海大学, 海洋学部, 特任講師 (40723854)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 精子貯蔵 / 父性解析 / 交尾後性淘汰 / 配偶者選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の実験サンプル数の不足を補うため、本年度は引き続き、雌のスルメイカが保有する精子塊のDNAの個体識別と、受精嚢内の精子を使って人工授精し、生まれた稚仔のDNAの父性解析の二つの手法によって、交接を行った雄個体の割り出しを行った。4個体の雌で実験を行う事ができたが、残念ながら人工授精後の発生がうまく進まず、ほとんどが発生初期に死んでしまった。そこで、早めに卵を固定してみたが、その後のPCR実験において、ほとんどの個体でDNAの増幅が見られなかった。 スルメイカでの進捗状況を補うべく、前年度からスペインの研究者との共同研究であるヨーロッパマツイカの繁殖生態の解明に乗り出した。この種はスルメイカと同じアカイカ科に属し、重要水産資源にもかかわらず、複数の受精嚢を持たず、体内に精子塊をいくつかの束に分けて貯留する。ヨーロッパマツイカとの精子貯蔵戦略の比較は、スルメイカの複数の精子貯蔵期間の進化の解明に重要な情報をもたらすことが期待される。採集された雌の外套膜内には輸卵管の開口部付近に精子塊の束が確認された。ひとつの束には平均279本の精子塊が含まれたが、束の数自体は最大で3束、平均1.5束と少なかった。この一束が一個体に渡された雄と考えると、前年の結果から、一個体ではあるが、スルメイカは10個体と交接していたことが分かっているため、ヨーロッパマツイカはスルメイカに比べはるかに乱交度が低い配偶システムであると推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、前年度にデータを十分にとることができなかった、父性解析実験のサンプル追加を第一の目標にしていたが、孵化個体の発生で実験が頓挫してしまった。これを補うために、さらなる追加実験をしたかったのだが、本年度から、大学の常勤職に採用され、講義の準備や研究室の立ち上げ等、研究以外の面に多大な労力を割く必要ができたため、実験を行う事ができなかった。これには職場の移動に伴い、採集調査場所から遠く離れた事も影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の施設でDNA実験を行うための薬品の購入や環境整備はおおむね整ったので、次年度も改めて父性解析の追加実験を行っていく。 また、前年度から実施しているヨーロッパマツイカの研究はすでにサンプルが手元にあるため、あとはDNA実験を行うだけで十分な結果を得られることができる。これは、これまでサンプル集めや稚仔の発生で苦労しているスルメイカと異なり運要素が限りなく低く、確実に結果を残せるものであり、挑戦的なスルメイカ実験を上手く補う事ができる。 最終年度はこれら二つの実験を遂行し、結果の比較からスルメイカの複数精子塊の進化について検討していく方針である。
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Causes of Carryover |
本年度に予定通りの予算を使用できなかった理由は、本年度から所属が変わり、講義や研究室発足の準備に労力を割かれ、予定した実験、特にフラグメント解析を行う事ができなかったことにある。 しかし、DNA実験の準備自体は、本年度に機材の購入や環境整備が完了しているため、次年度にフラグメント解析を含めた本年度の実施できなかった実験を実施することで、当該助成金を使用する予定である。
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