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2019 Fiscal Year Research-status Report

固着性動物群集が沿岸生態系の生物多様性形成および餌料環境にもたらす影響の解明

Research Project

Project/Area Number 18K05791
Research InstitutionKitasato University

Principal Investigator

広瀬 雅人  北里大学, 海洋生命科学部, 助教 (10809114)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2021-03-31
Keywords固着性動物 / コケムシ / 小型甲殻類 / 種組成 / 棲み込み / 摂餌行動 / 多様性
Outline of Annual Research Achievements

本研究は,①固着性動物の生活史と海洋環境との関係,②固着性動物群集を利用する小型無脊椎動物の生活史,③固着性動物の摂餌量が餌量環境に与える影響の3点について,野外調査および飼育実験により明らかにすることを目的とする.
本年度は前年度に続いて,岩手県大槌湾,越喜来湾,および宮城県松島湾において,環境が大きく異なる地点および水深帯に試験板を垂下し,これらを交換・観察することで,各湾における付着生物の種組成や季節消長と生息環境との関係を明らかにした.
また本年度は,これら3つの湾すべてにおいて試験板上の固着性動物群集を利用する小型甲殻類の種組成についても調査し,それらの湾間における違いを明らかとした.本研究の結果から,これらの人工垂下物が小型甲殻類の生物量と多様性の維持に大きく関わっている可能性が示唆された.また,表在性動物については,ワレカラ類の摂餌行動および基質への付着力について,ワレカラ数種を対象に餌料および付着基質を変化させた飼育実験を行い,ワレカラ類による固着性動物群集の利用形態の詳細を明らかにした.
固着性動物の摂餌生態については,松島湾で夏から秋に優占するフサコケムシを対象に,単離培養した渦鞭毛藻を餌量として,異なる水温,流速,餌料濃度環境下での摂餌行動(触手冠数),摂餌量(偽糞数),消化率(偽糞内の消化細胞数/全細胞数)の変化を調べた.その結果,水温が高く流速が緩やかで餌料濃度が高いほど摂餌行動と摂餌量が増加することが明らかとなった.一方で,コケムシの排泄物である偽糞内の細胞消化率は,それらの環境の違いによらず一定であることも明らかとなった.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

予定していた試験板を用いた調査を継続して実施することができ,さらに本年度は調査対象としたすべての湾において付着生物のみならず表在性の小型甲殻類の種組成についても調べ,湾間での相違点を明らかにすることができた.また,表在性動物については,ワレカラ類の摂餌行動および基質への付着力についても種ごとに明らかにすることができた.
一方,本年度は荒天等のため大槌湾で予定していたROV調査を実施することができず,海底岩礁域の固着性動物群集に関する観察数を増やすことはできなかった.これについては,過去の調査で採集した標本を用いることで観察数を補った.
コケムシの摂餌行動に関しては,新たに異なる餌料濃度環境下における摂餌実験を実施することで,フサコケムシの摂餌生態をより詳細に把握することができた.
これらの点から,おおむね順調に進展していると判断した.

Strategy for Future Research Activity

試験板を用いた調査では,試験板上の固着性動物の付着量すなわち加入・生残結果を観察することで,水中垂下物上における固着性動物のおおよその加入・現存量を把握することが可能である.一方で,水中垂下物以外の自然環境を含む実際の海域における同種の現存量は,試験板の結果のみでは推定が困難である.そこで次年度は,各調査地点の環境水を採水し,環境DNAを用いて目的とする固着性動物種の調査海域における現存量推定を試み,これを試験板の結果と併せて評価することを目指す.
試験板上の固着性動物群集を利用する表在性動物に関しては,継続して種組成および現存量の変動を成熟度とあわせて明らかにするとともに,水中の流れを可視化した飼育実験により,ワレカラ類の摂餌行動の種による違いを詳細に明らかとする.
フサコケムシを含む固着性動物の摂餌生態に関しては,松島湾より温暖な海域において同種の群体を採集し,同様の実験を行うことで,水温等の生息環境が大きく異なる海域の群体においても松島湾の群体と同様の結果が得られるのかを検証していく.
ROVを用いた海底岩礁域における調査は,可能な限りより多くの群集を観察してデータの精度を高めていく.

Causes of Carryover

次年度使用額が生じた理由:調査に使用する機材,交通手段,および調査期間に変更が生じたため.
次年度使用額の使用計画:次年度の野外調査旅費に当てるとともに,新たに実施予定の環境DNA分析用の機材の購入,荒天や度重なる使用により劣化した調査機材の新調,および小型甲殻類を対象とした新規の飼育実験用の機材購入に使用する予定である.

  • Research Products

    (4 results)

All 2020 2019

All Presentation (4 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results,  Invited: 1 results)

  • [Presentation] 異なる水温・流速・餌濃度環境下におけるフサコケムシの摂餌量2020

    • Author(s)
      広瀬雅人,大橋孝輔,田口銀嗣,大木雄介
    • Organizer
      2020年度日本付着生物学会研究集会
  • [Presentation] 養殖漁業に関わる付着生物の生態2020

    • Author(s)
      広瀬雅人
    • Organizer
      大船渡市漁業就業者確保育成協議会主催 漁業に関する勉強会「漁場環境について考える」
    • Invited
  • [Presentation] 三陸沿岸の水中垂下物上の固着性動物群集をとりまく海洋生物学2019

    • Author(s)
      広瀬雅人
    • Organizer
      2019年度日本付着生物学会シンポジウム「三陸における付着生物研究」
  • [Presentation] Experimental study on the effect of temperature, flow velocity, and particle concentration on feeding and digestion in Bugula neritina2019

    • Author(s)
      Hirose M., Ohashi K. and Taguchi G.
    • Organizer
      18th International Bryozoology Association Conference
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2021-01-27  

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