2018 Fiscal Year Research-status Report
Impact assessment of Noctiluca scintillans red tide on nutrient dynamics, biological processes in lower trophic levels and material cycle in the neritic area of Sagami Bay
Project/Area Number |
18K05794
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
荒 功一 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (40318382)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 夜光虫赤潮 / 細胞内栄養塩含有量・濃度 / 排泄速度 / 栄養塩滲出(溶出)速度 / 栄養塩プール / 栄養塩供給 / 相模湾沿岸域 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、相模湾(江の島沖)沿岸域(水深約55 mに設けた1定点)において各月2回の頻度で船舶を用いた観測を実施し、物理・化学・生物特性(水温、栄養塩濃度、クロロフィルa濃度、植物プランクトンの出現密度、一次生産速度)ならびに夜光虫Noctiluca scintillansの出現密度、細胞内栄養塩類含有量・濃度、排泄速度、栄養塩滲出(溶出)速度などの測定を行った。 2018年度の結果は: (1)夜光虫の出現密度は、春~夏季、特に上層(水深10 m層以浅)で高く、秋~冬季に低いか出現が認められなかった。(2)夜光虫の細胞内栄養塩濃度は、採集時の海水中の栄養塩濃度に対して平均743~17,004倍と非常に高かった。(3)夜光虫の細胞内栄養塩含有量は、現場海域(水深0~50 m層)に存在する(海水中+細胞内含有)溶存態無機窒素全体の平均3.3%(最大13.3%)、溶存態無機リン全体の平均3.3%(最大18.1%)を占めた。(4)夜光虫の栄養塩排泄速度は、実験開始1~3時間後に高く、その後時間経過に伴い急激に低下した。(5)夜光虫の出現密度と最大排泄速度より求めた窒素とリンの供給量は、一次生産速度からレッドフィールド比により推定した植物プランクトンの窒素要求量の平均7.2%、リン要求量の平均8.4%を満たし、特に夜光虫の出現密度が高く海水中の栄養塩類濃度が低かった5~7月に窒素要求量の9.4~19.2%、リン要求量の11.0~22.4%を満たしたと推定された。(6)死滅した夜光虫からの窒素・リン滲出(溶出)速度と時間との間にはそれぞれ有意な負の関係式が得られ、それらの関係式より夜光虫は死滅後100日以上(窒素が111日、リンが123日目まで)栄養塩を滲出(溶出)し続けたことが初めて明らかとなった。 などであり、本研究課題の目的を達成するための必要不可欠なデータを取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、相模湾(江の島沖)沿岸域において各月2回の頻度で船舶を用いた観測に基づく測定・試料採取・現場実験・試料分析ならびに夜光虫Noctiluca scintillansを用いた各種測定・実験を実施したことにより、物理・化学・生物特性(水温、栄養塩濃度、一次生産速度)ならびに夜光虫の出現密度、細胞内栄養塩類含有量、排泄速度、栄養塩滲出(溶出)速度などの測定の全ての項目について当初の計画どおりに進展した。また、2018年度は、2019年度以降にデータ解析を予定している低次生物特性(ピコ・ナノ・マイクロサイズに画分したクロロフィルa濃度、ピコ・ナノ植物プランクトンの出現密度、マイクロ植物プランクトン各種の出現密度とその組成)の測定についても当初の計画どおりに進展した。以上より、本研究課題の現在までの進捗状況としては、概ね順調に進展しているものと推察される。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、2018年度と同様に相模湾沿岸域において船舶を用いた観測に基づく測定・試料採取・現場実験・試料分析と夜光虫Noctiluca scintillansを用いた各種測定・実験を実施することにより、物理・化学特性(水温、栄養塩濃度)、低次生物特性(ピコ・ナノ・マイクロサイズに画分したクロロフィルa濃度、ピコ・ナノ植物プランクトンの出現密度、マイクロ植物プランクトン各種の出現密度とその組成、一次生産速度)ならびに夜光虫の出現密度、細胞内栄養塩類含有量、排泄速度、栄養塩滲出(溶出)速度などの測定を継続して行う。 さらに、2019年度は、2018年度に測定したデータを用いて夜光虫赤潮の発生過程と低次生物特性(ピコ・ナノ・マイクロサイズに画分したクロロフィルa濃度、ピコ・ナノ植物プランクトンの出現密度、マイクロ植物プランクトン各種の出現密度とその組成)の変動の関連性を解析し、また必要に応じて夜光虫と植物プランクトン群集の混合培養実験を行い、仮説①夜光虫赤潮の発生が富栄養化を促進するのか、またその際に仮説②植物プランクトン群集の構造(優占種が珪藻から有害赤潮プランクトンを含む非珪藻への)変化を引き起こすトリガーとなり得るのかを検証する。
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