2019 Fiscal Year Research-status Report
A method to detect fish electrocardiogram without human handling
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18K05795
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小島 隆人 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (60205383)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 心電図 / 環境影響評価 / マグロ延縄漁業 / オキゴンドウ / depredation |
Outline of Annual Research Achievements |
軟体動物の筋肉組織が特に低インピーダンスであることが判明しているスルメイカを用いて,底生魚類の心電図導出を試みた結果,これまで導出に成功しているウツボの他,マツカワからも人間が手を触れることなく明瞭な心電図が導出され,電極装着時(100拍/分)よりも心拍数もかなり低い(60拍/分)ことが判明した。人間の手によるハンドリングが影響するストレスの無い状態での心電図がいくつかの魚種で記録可能であることが確かめられたことから,最終年度には魚類に加え,貝類も用いて,海洋における環境影響評価の一手法として,生物の反応をモニタリングする方法への応用を予定している。 スルメイカを用いた魚類の心電図導出については,マグロ延縄漁具を用いたマグロ類の心電図導出を試みた。その結果,マグロ類の心電図導出は行えなかったが,まぐろ延縄漁業における釣獲魚および餌を食害することが知られている,オキゴンドウがスルメイカ電極を奪取する貴重な動画を撮影することに成功した。オキゴンドウの心電図は記録されなかったが,同種が餌を巧みに捻って引っ張る一連の行動が録画された。捻って下方に引っ張ることにより,マグロ延縄の釣針が仕掛けられている餌の魚の頭部と胴部が小さな力できれいに裂断することも実験的に確かめられた。針掛りしたマグロ類についても,同様の方法で頭部のみを残して,胴部を奪取可能であると推定され,同種が延縄漁具の針に触れることなく釣獲魚および餌のみを巧みに奪取する方法を学習していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自然界に生息する魚類の心電図導出について,いくつかの魚種については人間が捕捉することなく行えることが明らかとなってきた。現段階では長時間の記録は困難であるが,これまでの方法に比べて,格段に魚に及ぼすストレスの少ない方法による心電図記録方法を採用することにより,様々な環境変化により影響を受ける魚類の生理状態の推定に応用可能であると推測される。また,自然界に生息するマグロ類の心電図導出を試みた結果,食害行動を引き起こすことが知られている,オキゴンドウが餌を巧みに奪取する動画が世界で初めて記録された。心電図記録は行えなかったものの,オキゴンドウがマグロ延縄漁具に針掛りせずに釣獲魚や餌の頭部のみを釣針に残す食害のメカニズムが明らかとなった。これは当初の研究計画では予期していなかったが,まぐろ延縄漁具を用いてマグロ類の心電図記録を試みた結果得られた成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,新型コロナウイルス蔓延による外出制限により,フィールドでの実験がどこまで実施可能となるか不明であるが,これまでの2年間の実験により得られた非侵襲的な手法による心電図導出技法を用いて,水温変化や水中騒音が魚類に及ぼす影響を,人間が手を触れないで導出する心電図から得られる心拍数の変化,およびその時系列解析による自律神経の緊張程度により評価する方法を確立するための水槽実験を中心に行う予定である。 フィールド実験が可能な状況になれば,自然界を遊泳するマグロ類の心電図導出を試み,遊泳時の心拍数を明らかにしたい。また,鯨類およびサメ類によるまぐろ延縄漁業の食害行動についても,引き続きその行動解明を行う予定である。
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Causes of Carryover |
海中での心電図記録用に新たに開発されたマイクロデータロガーが約40万円であり,もう1台購入したかったが,予算不足により断念したため。本年度は現在まで,学外での実験が制約されており,マイクロデータロガーを利用した実験が行えるかは不明である。外部活動の制約が解除され次第,フィールド,特に外洋域での大型魚類の心電図記録を試みる予定であり,その際には昨年度購入を見送ったマイクロデータロガー1台を購入したいと考えている。
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Research Products
(3 results)