2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the significance of cyanobacterial circudian clook in aquatic ecosystems
Project/Area Number |
18K05797
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
吉山 洋子 龍谷大学, 農学部, 実験実習助手Ⅰ (80519968)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉山 浩平 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (90402750)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シアノバクテリア / 湖沼生態系 / 生物時計 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物のもつ約24時間の内生リズムを生み出すシステムを概日時計とよぶ.これまでの概日時計研究は原核生物のシアノバクテリアで特によく進んでいるが,その仕組みの解明に主眼が置かれ,生態系での適応的意義に関する研究は進んでいなかった.自然生態系では近年研究が始まったばかりで,海洋性シアノバクテリアの多くが概日リズムを持つことが明らかになっているが,研究の中心は海洋で,淡水域では殆ど調べられていない.そこで本研究では,淡水域を中心に「シアノバクテリア生物時計の,水域生態系における適応的意義を野外調査(テーマ1)及び実験室(テーマ2)において検証する」ことを目的に以下のように進める. ・テーマ1(野外調査). 淡水域生態系におけるシアノバクテリア時計遺伝子保持の検証:昨年度に引き続き,今年度も,琵琶湖北湖および南湖で野外調査を行い,シアノバクテリアの単離を行なった.また,今年度はこれまでに得た株の時計遺伝子の解析を行う. ・テーマ2(室内実験). シアノバクテリア体内時計の適応的意義の実験的検証:野外においても「内生リズムと環境サイクルの一致が生存を有利にさせる」ことが予測される.そこで,野外調査により得られた株で,昼夜リズムと生理活性(増殖速度と光合成活性)の関係を明らかにする.昨年度は,実験室で光合成速度測定システムの構築を行った.今年度は,本システムと,昨年度得た株を用いて,複数の明暗周期下で培養を行い,生理活性指標(増殖速度,光合成活性)を最大化する周期を調べ,各株の内生リズムや,実際の出現時期の昼夜パターンとの比較を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は,琵琶湖由来のシアノバクテリアの単離の継続及び,得られたシアノバクテリアの時計遺伝子の解析(テーマ1),実験室において内生リズム測定を行う予定であった(テーマ2). テーマ1の野外調査は,昨年度に引き続き,琵琶湖北湖表水層および南湖において,表水層,クロロフィルピーク,水温躍層,深水層等で採水を行った.採取した湖水を処理,培養し,藻類の単離を行なった.得られた藻類は,蛍光顕微鏡を用いてシアノバクテリアと他種の判別を行った.昨年度分と合わせて,継代培養を行っていたが,今年度秋~冬にかけ,培養プレートへのコンタミネーションにより,藻類の大量枯死がおこってしまった.こういった事態も想定し,シアノバクテリア実験株と同様の方法で菌株の凍結保存も試みていたが,うまく再生することができなかった.現在,復旧にむけ,琵琶湖外も含めた淡水域で,藻類の再単離を行っている. テーマ2では,単離したシアノバクテリアを用いた光合成活性測定を行う予定であったが,藻類の枯死により行えず、遅れが生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
・テーマ1(野外調査)淡水域生態系におけるシアノバクテリア時計遺伝子保持の検証:藻類の再培養とともに,野外から新規シアノバクテリアの単離を継続する.また,培養方法についても文献等を参考に,同様の失敗が発生しないよう更なる改良を進める.得られた株は,時計遺伝子(kaiA, kaiB, kaiCおよび,その相同遺伝子)の保持の解析を行う.これらの結果より,淡水性シアノバクテリアの時計遺伝子の保有率と時計遺伝子の多様さを明らかにする.海洋に比べ,環境変動の大きい淡水域では,時計遺伝子は生存に必須であり,欠損する種はないと予想している. ・テーマ2(室内実験)シアノバクテリア体内時計の適応的意義の実験的検証:野外より単離した株を用いて仮説の検証実験を行う.具体的には,微量溶存酸素測定システムを用い,様々な明暗周期下で培養を行い,生理活性指標(増殖速度,光合成活性)を最大化する周期を調べ,各株の内生リズムや,実際の出現時期の昼夜パターンとの比較を行う.内生リズムは恒明条件下でもリズムが変化しにくい光合成系遺伝子,または時計遺伝子の遺伝子発現解析によって求める.培養実験はOuyang et al.(PNAS 1994)に従い行う.増殖速度測定は,1回/2日,蛍光顕微鏡法により計数し算出する.光合成活性測定は,明暗瓶法を改良して用いる.本操作実験の結果より,シアノバクテリアの内生リズムに対し,明暗周期の変化が各要因に与える影響を解析することで,概日時計がシアノバクテリアの生存競争に与える影響を考察する.本実験の結果は,reproductive fitnessは,各株の出現時期の昼夜パターンと一致した明暗周期において,最大化されると予測される.
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Causes of Carryover |
シアノバクテリアの枯死により計画全体に遅れが生じた.今年度行うはずであった研究に関連する消耗品の購入ができなかったため,使用額に差が生じた.次年度は,今年度の研究計画分も含めて計画を遂行する.計画に合わせて,消耗品購入,学会参加等に充ていく計画である.
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