2018 Fiscal Year Research-status Report
酸素移動容量係数を用いた原生生物からの脂質の選択的生産システムの開発
Project/Area Number |
18K05799
|
Research Institution | Asahikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
松浦 裕志 旭川工業高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (80572510)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 酸素移動容量係数 / 不飽和脂肪酸 / 飽和脂肪酸 / 原生生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物を用いて油脂生産を行う際に脂肪酸の質・量をコントロールすることは、コストを下げる面で重要である。本研究では培地内の溶存酸素量の目安である酸素移動容量係数を変化させた状態で培養し、脂肪酸の生産条件を検討することとした。具体的には脂肪酸を多く生産する原生生物であるAurantiochytrium sp. NBRC102614株を用いて三角フラスコ培養実験および発酵槽内の溶存酸素を変化させて培養実験を行った。 今年度はまず三角フラスコでは培養温度の最適条件を検討した。15℃から30℃の間の各種温度で培養したところ、25℃前後が最適条件であったが、温度によって細胞量、脂質含有率の最適温度が異なった。培地1リットルあたりの細胞量は25℃で最も多く得られ、脂質含有率は27℃で最も高かった。その後細胞量が多かった温度条件(25℃)で5リットル培養できる発酵槽を用いた培養を検討した。培養の検討前に培地を入れた発酵槽で通気量、回転数を変化させ酸素移動容量係数を求める式を実験により定めた。回転数を一定に酸素移動容量係数を変化させ(7, 9, 11[/h])、培養実験を実施した。培地1リットルあたりの細胞量は酸素移動容量係数が9[/h]で最も多かった。顕微鏡で細胞を観察したところ、酸素移動容量係数が11[/h]の時には細胞が破壊されている様子が見られた。一方脂質含有率は酸素移動容量係数が低い方が高い傾向が見られた。ガスクロマトグラフィー分析を用いて脂肪酸の分析を行ったところ、酸素移動容量係数が低いと高度不飽和脂肪酸の割合が高く、酸素移動容量係数が高いほど飽和脂肪酸の割合が高くなる傾向が見られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はフラスコ培養で培養最適温度を検討し、酸素移動容量係数を求める式を実験によって定めることができ、3条件の酸素移動容量係数での培養実験をすることができた。そのためおおむね当初の研究スケジュール通りに実施できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究スケジュールに従い、今後は撹拌速度を変化させ細胞量や産生物の影響を評価していく。酸素移動容量係数が高い(通気量が多い)と細胞が破壊される現象が見られたので、撹拌速度を増加させたときに同様の傾向がみられるか検討し、細胞が破壊されない条件を検討していきたい。サイズの違う発酵槽を用いて、同様の傾向がみられるのかを検討し、スケールアップに向けた実験を実施する予定である。
|
Causes of Carryover |
実験用消耗品が予定より安価に購入できたため、次年度使用が生じた。次年度は培養条件の実験に必要な消耗品を中心に利用していく予定である。また、ある程度結果がまとまりつつあるので、学会発表を実施するための旅費として利用する予定である。
|