2018 Fiscal Year Research-status Report
アマモ場の衰退・再生阻害機構の解明ー環境因子および除草剤の複合影響ー
Project/Area Number |
18K05806
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
持田 和彦 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 瀬戸内海区水産研究所, センター長 (00371964)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽野 健志 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 瀬戸内海区水産研究所, 主任研究員 (30621057)
吉田 吾郎 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 瀬戸内海区水産研究所, グループ長 (40371968)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アマモ / 光合成 / 最大量子収率 / 生長阻害 / 除草剤 / 複合曝露試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
除草作用を持つ農薬や船底塗料用防汚剤等の化学物質(=以下、除草剤)および光量や水温等の環境因子がアマモ(Zostera marina)に及ぼす複合作用について明らかにするため、複合曝露試験を実施した。瀬戸内海沿岸域の海水中から高い頻度で検出されている光合成阻害剤イルガロール 1051、ジューロン、ブロマシル、および、シアナジンそれぞれについて既報を参考にして 50%ile 値および 90%ile 値を求め、上記 4 物質の 50%ile 濃度混合溶液および 90%ile 濃度混合溶液を作製した。試験は、助剤対照区、50%ile 濃度混合溶液曝露区(L 濃度区)、および、90%ile 濃度混合溶液曝露区(H 濃度区)の 3 区を1 グループとし、2 グループを用意して、それぞれ約 47 umol/m2/s (Dark 区)あるいは約 120 umol/m2/s(Light 区)となるように光を照射し、14 日間のアマモ親株の流水式曝露試験を実施した。また、平成 30 年度は 22, 25, 18, および 14℃の 4 水温で試験を実施した。 曝露試験の結果、いずれのグループにおいても H 濃度区において最大量子収率は助剤対照区と比較し有意に低い値を示した。この傾向は異なる水温下でも同様であった。葉の生長に関しては、いずれの水温においても Dark 区の個体が Light 区の個体より低くなる傾向を示した。また、水温が 22 ℃ 以上の場合には、Dark 区および Light 区ともに助剤対照区および L 濃度区あるいは H 濃度区との間に有意な差は認められなかったが、18 ℃ 以下の場合には Dark 区において助剤対照区と比較して H 濃度区の個体の生長は有意に低い値を示した。以上の結果から、ある水温以下で、なおかつ光が不十分であると除草剤の影響が出やすいことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成 30 年度の研究計画は、除草剤濃度、光条件、および、水温を様々に変化させた、環境因子および除草剤の複合曝露試験を実施することである。ごとにアマモに対する毒性を明らかにすることである。2 除草剤濃度、2 光条件、4 水温の複合曝露試験を実施した結果、18 ℃ 以下の水温で、なおかつ光が不十分であると除草剤の影響が出やすいことが示唆する結果を得た。さらに、アマモ種子の発芽をエンドポイントとする毒性試験を実施するため、発芽時に差次的発現する代謝物を検索するためのサンプルを得て、外注分析を実施した。また、関連する内容の論文を国際誌において一編発表した。以上を鑑み概ね計画通りに進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画は、昨年度に引き続き除草剤濃度、光条件、および、水温を様々に変化させた、環境因子および除草剤の複合曝露試験を実施し、平成 30 年度に得られた結果、すなわち、ある水温以下で、なおかつ光が不十分であると除草剤の影響が出やすいという傾向の再現性について検証する。光合成を行えない種子の発芽から幼胚軸形成に及ぼす影響に着目し、代謝物総体解析を外注した。今年度は結果の解析を重点的に実施し、発芽期に発現が変動する代謝物の同定を試みる。
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Causes of Carryover |
当初計画では、複合曝露試験に使用する送液ポンプを数台新調する予定であったが、予備試験を実施した結果、別途所有しているシリンジポンプを使用したほうが薬液濃度の調整が容易であったため、以降の曝露試験はシリンジポンプを使用して実施した。また、曝露試験に使用するアマモの採集を用船して実施する予定であったが、あらたに船を使用せずに採集できる場所を見つけることができ、そこからサンプルを採集した。従って、これらの必要経費が繰り越しとなってしまった。また、平成 31 年度については計画の変更は特にないため、当初の要求額通り、毒性試験に必要な試薬類、学会参加旅費や調査旅費、および試験の補助に必要な人件費等に使用する予定である。
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