2019 Fiscal Year Research-status Report
パエニバチルス酵素による紅藻ダルス・キシロオリゴ糖の調製とその腸内菌叢改善作用
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18K05810
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岸村 栄毅 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (50204855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾島 孝男 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (30160865) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 未利用資源 / 紅藻 / ダルス / キシラン / キシロオリゴ糖 / ビフィズス菌 / キシラナーゼ / キシロシダーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、北海道産ダルス(Palmaria palmata)からユニークな構造を持つβ-(1→3)/β-(1→4)-キシロトリオース(DX3)を調製し、DX3がβ-(1→4)-キシロトリオース(X3)と比較してBifidobacterium adolescentis(ビフィズス菌の一種)に対してより高い選択的増殖促進作用を示すことを明らかにしました。 本年度は、Bif. adolescentisがDX3をどのような経路で資化するかを検討しました。すなわち、Bif. adolescentisの3種類のキシロシダーゼ (BAD1527、BAD0423、BAD0428) を大腸菌で発現しました。そして、それらの酵素のキシロシダーゼ活性をpNP-Xylを用いて測定し、DX3およびX3の酵素分解物をHPLCで分析しました。その結果、BAD0428は、BAD1527及びBAD0423と比較して高いキシロシダーゼ活性を示しました。次に、本実験条件下において、BAD1527はDX3およびX3を殆ど分解しませんでした。一方、BAD0423はDX3に対して高い活性を示し、X3に対して低い活性を示しました。また、BAD0428はX3に対して高い活性を示し、DX3に対して低い活性を示しました。以上のことから、Bif. adolescentisは、まずBAD0423によりDX3のβ-(1→3)-結合を切断してβ-(1→4)-キシロビオースとキシロースに分解し、次にBAD0428によりβ-(1→4)-キシロビオースを2分子のキシロースに分解することが示唆されました。また、放線菌(Streptomyces sp.)由来キシラナーゼがキシロオリゴ糖を効率良く生成することを見出しました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北海道のコンブ養殖現場で多量に除去される未利用の紅藻ダルスからβ-(1→3)/β-(1→4)-キシロトリオース(DX3)を調製し、DX3がβ-(1→4)-キシロトリオースと比較してBifidobacterium adolescentis(ビフィズス菌の一種)に対してより高い選択的増殖促進作用を示すことを明らかにしました。そして、DX3がBif. adolescentisに資化される経路の概要を把握できました。また、Paenibacillus sp. PSY-1株由来キシラナーゼよりも、放線菌(Streptomyces sp.)由来キシラナーゼがキシロオリゴ糖を効率良く生成することを見出しました。さらに、ダルス乾燥粉末の熱水抽出により、比較的高純度のキシランを簡易に調製することができました。以上のように、本研究は概ね順調に進行しています。
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Strategy for Future Research Activity |
ダルス由来β-(1→3)/β-(1→4)-キシロトリオース(DX3)がBifidobacterium adolescentis(ビフィズス菌の一種)に対して選択的増殖促進作用を示すことを見出し、DX3がBif. adolescentisに資化される経路の概要を把握しました。そして、本キシロオリゴ糖の腸内菌叢改善作用をin vivoで試験するために、北海道産ダルスからキシランの簡易調製法を開発し、キシロオリゴ糖調製に適した放線菌由来キシラナーゼを見出しました。 今後は、放線菌(Streptomyces sp.)由来キシラナーゼの酵素化学的特性を詳細に調べます。そして、ダルス乾燥粉末の熱水処理により調製したキシランから放線菌由来キシラナーゼを用いてキシロオリゴ糖を調製します。さらに、調製したキシロオリゴ糖がBif. adolescentisに対して高い選択的増殖促進作用を示すことをin vitro試験において検討します。また、Bif. adolescentisによるDX3の資化特性を明確にするため、BAD0423とDX3結合体の立体構造解析を行います。
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Causes of Carryover |
ビフィズス菌増殖促進に関する実験を実施した結果、興味深い成果が得られたことから、当初予定していた動物試験を行わなかったため。翌年度も引き続き、ビフィズス菌の選択的増殖促進作用機構の解明研究を実施する計画です。
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