2019 Fiscal Year Research-status Report
宿主細胞接着因子を標的とした新規滑走細菌症ワクチンの開発
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18K05811
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
楠本 晃子 帯広畜産大学, 動物・食品検査診断センター, 助教 (60535326)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 滑走運動 / 魚病 |
Outline of Annual Research Achievements |
滑走細菌症は様々な海水魚で発生し、国内外の稚魚生産場や養殖場で問題となっている細菌感染症である。日本の養殖魚種では本症に使用可能な水産医薬品は魚種およびサイズが限られており、多くの場合、水産医薬品は使用できない。また、日本では滑走細菌症のワクチンもない。このような背景から、本研究は滑走細菌症のワクチン開発を目指す。 滑走細菌症の原因菌Tenacibaculum maritimumはフラボバクテリウム科に属している。フラボバクテリア科の細菌には、固形物に張り付き、固形物の表面を這うように動く運動(滑走運動)を行うものが多く知られている。滑走運動を行う病原細菌では滑走運動の病原性への関与が知られているものがいる。そこで、本研究では滑走運動に重要な因子がワクチン分子となりうると考えた。本菌の滑走運動の分子メカニズムに関する研究報告はこれまでになく、滑走運動に重要な遺伝子も同定されていない。そこで、フラボバクテリウム科の細菌で、最も滑走運動の研究がおこなわれているFlavobacterium johnsoniaeに着目した。 T. maritimumのゲノムにF. johnsoniaeの滑走運動関連遺伝子群が保存されていることが分かった。T. maritimum滑走運動変異株のゲノム解析を行ったところ、滑走運動関連遺伝子のいくつかに変異が見つかった。これらの結果から、T. maritimumとFlavobacterium johnsoniaeは共通の滑走装置を持つことが推測される。また、変異遺伝子は滑走運動との関連が推測されるので、ワクチン分子候補となりうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
滑走運動変異株のゲノム解析を行ったところ、T. maritimumのゲノムはリピート配列が多く、解析が困難を極めている。ロングリードとショートリードを組み合わせることでこの問題に取り組んでいるところであるが、予想以上に時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
滑走運動変異株のゲノム解析では、ロングリードとショートリードを組み合わせることでこの問題に取り組み、ゲノムのシークエンスの完了とすべての変異遺伝子の同定を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大により、参加を予定していた学会が中止となり、旅費の支出が減った。
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