2019 Fiscal Year Research-status Report
付着珪藻の生物皮膜形成メカニズムに基づく新規防汚性表面微細構造の開発
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18K05812
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
室崎 喬之 旭川医科大学, 医学部, 助教 (40551693)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 防汚技術 / 高分子材料 / 表面微細構造 / 付着珪藻 / バイオフィルム |
Outline of Annual Research Achievements |
付着珪藻などの海洋付着生物は海中の人工物表面に対し生物皮膜を形成することにより深刻な海洋汚染を引き起こしている。これまで殺生作用のある防汚塗料などにより、これらの生物皮膜形成は抑制されてきたが、他の海洋生物に対する毒性が問題となっている。本研究課題では付着基質表面の性状が生物皮膜形成に与える影響を明らかにし、得られた知見から低環境負荷型防汚材料の創成を目指す。 今年度は、材料表面での生物皮膜形成を調べる為、モデル付着珪藻として5種類の付着珪藻の研究室内での安定的培養を試みた。培養環境の照度や水温を調整した結果、Navicula sp., Navicula ramosissima, Amphoraの3種は安定的な拡大培養をする事に成功した。一方、 Licmophora sp., Cocconeis sublittoralisの2種に関しては、安定的な拡大培養が全くできない、もしくは増殖速度が著しく遅いという結果となった。その為、今年度はNavicula sp., Navicula ramosissima, Amphoraを用いて付着実験を行った。 表面官能基が付着珪藻の生物皮膜形成に与える影響を調べる為、自己組織化単分子膜(SAM)を利用し付着基質表面を各種官能基にて修飾し付着実験を行った。 Amphoraに比べNavicula 2種は比較的強い接着性を示した。増殖速度に関して、基板間での顕著な違いは見られなかったが、付着群体の形式には差が見られ、OH基修飾表面ではNavicula 2種において液中に浮遊する群体が見られた。また、Navicula ramosissimaにおいては直線性の高い群体が観察され、OH基修飾表面では群体が部分的に剥離し液中に群体が直立しているような形態が観察された。この事から表面修飾官能基が付着珪藻の剥離挙動に影響している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
付着基質表面での滑走性(運動性)を観察したところ、Navicula sp.に関しては、ほとんど滑走性は観察されなかった。一方、Navicula ramosissimaは活発な運動性を示した。今後、表面形状等を変えた場合に滑走性がどのように変化するのか解析し、滑走行動と付着の関係性について調べる。またAmphoraはNavicula 2種と比較した場合、付着個体数に対するガス発生の割合が多い傾向があることが観察された。この結果から、表面性状とガスの発生の関係性についても注目して研究を進めたいと考えている。Cocconeis sublittoralis、Licmophora sp.は他3種と大きく形状が異なる為、付着基質の表面形状を変えた場合に付着様式が異なる可能性がある。そのため、今後も継続して安定的な培養を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は主に表面官能基と付着珪藻の付着形態の関係性について調べた。次年度は弾性率の異なる材料(柔らかいポリジメチルシロキサンやハイドロゲル、硬いポリスチレンなど)の表面での付着様式の違いや、リソグラフィによる表面微細加工を施した付着基質表面での付着実験を試みる。また今年度、特にNavicula ramosissimaにおいて特徴的な付着群体形状や高い滑走性が見られたことから、画像解析によるNavicula ramosissimaの付着群体形状の解析や、動体追跡による付着基質表面での滑走性の評価を試みる。
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Causes of Carryover |
(理由) コロナウイルス感染拡大の為、参加を予定していた学会が開催中止となり、また研究打ち合わせを行う機会も失われた結果、旅費に係る支出が少なくなった為。 (使用計画) 国際学会での発表に係る旅費として30万円程度、付着珪藻滑走運動解析の為の画像解析ソフトウェアに50万円程度の物品費を見積もっている。
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Research Products
(12 results)