2022 Fiscal Year Research-status Report
付着珪藻の生物皮膜形成メカニズムに基づく新規防汚性表面微細構造の開発
Project/Area Number |
18K05812
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
室崎 喬之 旭川医科大学, 医学部, 助教 (40551693)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 防汚材料 / 高分子材料 / 表面微細構造 / 付着珪藻 / バイオフィルム |
Outline of Annual Research Achievements |
付着珪藻は海中の固体表面において生物皮膜を形成し、場合によっては人類の経済活動にとって良くない影響を及ぼす事が知られている。付着生物である付着珪藻の群体形成に関して個体密度や光など環境要因が影響する事が知られているが、付着基質の物理的・化学的な性質がどのように作用するかはこれまであまり知られていなかった。これまで本研究では、モデル付着生物としてNavicula種を主に用い様々な性状を有する付着基質表面にてその付着挙動について調査を行った。 これまでの研究において、付着基質表面の幾何的な性質が付着珪藻の増殖挙動に大きな影響を与える事が示唆された。今年度の研究では、熱プレスにより作製したポリスチレン(PS)製マイクロディンプル表面において付着珪藻の増殖挙動をFE-SEMによる観察及び、画像解析ソフトによる表面被覆率の解析により調査した。 実験の結果、孔径6マイクロメートルから22マイクロメートルの各マイクロディンプル表面において付着珪藻の細胞塊(クラスター)が観察され、クラスターサイズは10平方マイクロメートルから20平方マイクロメートルが最も多く見られる結果となった。また最終的な被覆率の比較から、コントロールである平滑基板を除いた各ディンプル構造上では、ディンプル孔径が小さくなる程、被覆率が低くなる傾向にある事がわかった。さらに初期クラスターサイズは表面被覆率に影響せず、ディンプル径のみが被覆率に影響する事が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
共同研究者との対面での打ち合わせの減少や、実験サンプルの入手機会の減少、観察に用いる電子顕微鏡使用の機会の減少等が大きく影響した。結果として想定していたよりも実験の機会が少ないものとなり、少数サンプルの解析しか行う事ができなかった。その代わりオンラインによる研究打ち合わせへの切り替えや、これまで得られた画像データの解析にリソースを費やした。当初は付着の有無に焦点を当てて研究を行ってきたが、画像解析に注力した結果、増殖速度や形態の差が本研究の本質である事に気がつく事ができた。残りの期間では、今年度行う事ができなかった付着基質の物理的・化学的性質が付着珪藻の付着・増殖挙動に与える影響について調査を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた研究結果より、Navicula種は付着力が高く、運動性も高い事が分かっている。また、上述のようにマイクロディンプルのような表面の幾何的性質が表面被覆率に大きな影響を与えている事も明らかとなった。今後、異なる幾何的性質を持つ表面や物理的・化学的性質の異なる表面においてNavicula種の滑走運動性を画像解析により評価し、付着基質の性状が付着珪藻の群体形成及び増殖速度に与える影響について調べる予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) コロナ禍が続き、研究成果発表の為参加予定であった国際学会が開催延期もしくはオンライン開催となり、また研究協力者との共同研究打ち合わせを対面にて行う機会も多く失われた結果、旅費に係る支出が少なくなった為。本来の予定していた実験計画にも遅れが生じており、物品費の支出も少なくなった為。
(使用計画) 国際学会での発表に係る旅費として30万円程度、付着実験用基板作製費等に50万円程度の物品費を見積もっている。
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Research Products
(11 results)