2023 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of age-related changes in reproductive function of male dolphins
Project/Area Number |
18K05817
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
船坂 徳子 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (50616175)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イルカ / クジラ / 加齢 / テストステロン / 精子形成 / 性ステロイド / 噴気 |
Outline of Annual Research Achievements |
群れ社会で生活する鯨類は平均寿命40~60年で,種によってはメスが繁殖機能を失った後も長く生存し群れの維持に貢献する.しかし,オスの繁殖可能期間や高齢オスの群れの中での役割は明らかにされていない.本研究では,加齢とともにオスの精子形成にどのような変化がおき,それが精子の形態や受精能にどのような変化をもたらすのかを調べることで,未解明であった高齢オス鯨類の繁殖生理を明らかにすることを目的として研究に取り組んだ.また,本研究における検討過程で,訓練上の問題で試料採取が難しい飼育個体が多いことがわかってきたため,各年齢段階の個体からの試料採取を可能にするべく,採血より低侵襲的に試料が採取可能な「噴気」に着目し,この試料を用いた性ステロイド濃度測定の有用性を検討した.最終年度にあたる本年度は,前年度までの検討結果を踏まえ,更なるデータ解析と成果公表に取り組んだ.本研究では,コビレゴンドウ,ハナゴンドウ,カズハゴンドウ,ハンドウイルカ,ミナミハンドウイルカ,スジイルカ,スナメリ等の複数種を対象とした.コビレゴンドウ,ハナゴンドウ,ハンドウイルカを対象とした検討から,精巣における精子形成能が加齢に伴って減少する種は認められなかった一方,一部の評価指標に加齢性変化がみられた種があった.また,ヒトの男性更年期の診断に有用であるとされている遊離テストステロン濃度に着目し,ミナミハンドウイルカ高齢個体を対象に,若齢期から高齢期の期間を含む20年分以上の血液試料を用いて血中濃度を測定したが,加齢に伴って減少する傾向は認められなかった.さらに,国内ではじめてとなる噴気中性ステロイド濃度の分析の結果,メスでは血中黄体ホルモン濃度が高い妊娠個体で特に高い噴気中濃度が検出され,オスについても,血中雄性ホルモン濃度が高い個体で噴気中濃度が高くなるという,本測定法の有用性が確認できた.
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