2020 Fiscal Year Research-status Report
甲殻類の生殖制御と栄養~インスリンシグナル経路からの新規アプローチ~
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18K05819
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
筒井 直昭 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (00643785)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 甲殻類 / クルマエビ / インスリン様ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに得られた卵巣トランスクリプトームのデータを再解析した結果、インスリン様ペプチドと考えられる配列が新たに見つかった。遺伝子クローニングと分子系統解析に基づき、このペプチドがゴナデュリン(gonadulin)という節足動物に特有のインスリン様ペプチドであることが分かった。組織特異的発現の解析によって、ゴナデュリン遺伝子は雄の生殖腺で高い発現を示すことが判明した。これまでの結果を総合すると、雄の生殖線では精巣型インスリン様ペプチド、ゴナデュリン、そして既知のインスリン様造雄腺因子という3種類のインスリンファミリーが発現することが示された。加えてこれらのペプチドの主要な発現部位が精巣、輸精管、造雄腺と重複しなかったことから、雄の生殖腺においてそれぞれが異なる機能をもつことが示唆された。 卵巣型インスリン様ペプチドと卵黄形成との関わりを調べる目的で、天然に成熟した個体、および眼柄切除によって卵巣発達を誘導した個体の卵巣での遺伝子発現量を調べた結果、両者で有意な差は確認されなかった。 精巣型インスリン様ペプチドについても、眼柄切除によって生殖腺の発達を促した個体と、対照となる未切除個体との間で遺伝子発現量を比較した。眼柄切除により造雄腺の肥大傾向、インスリン様造雄腺因子の有意な発現上昇、さらには精巣の肥大傾向が確認されたものの、精巣型インスリン様ペプチドの遺伝子発現には変化がみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
卵巣型インスリン様ペプチドについては、遺伝子発現と卵黄形成の進行段階との間に明確な相関が確認できなかったことから、当初想定していたような生殖制御への関与については再考が必要となった。精巣型インスリン様ペプチドについても、精巣発達を促すとされる眼柄切除によって発現が変動しなかったことから、やはり生殖機能の制御に関わる可能性は低いと考えられた。新しく見出されたゴナデュリンと合わせて、生理機能の検討を広範に行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
3種類のインスリン様ペプチドが見出され、それぞれ生殖腺において特徴的な発現パターンを示すことが分かったものの、生殖との関連は今のところ見出されていない。今後、絶食など栄養条件の変化よる発現変化が見られるかどうかを調べる。また、2本鎖RNAを用いた遺伝子ノックダウンによる影響などからペプチドの作用を探る。
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Causes of Carryover |
年度の後半にPCR関連消耗品の需給が逼迫し、一部の納品が年度内にされなかったために次年度使用額が生じた。当該物品は次年度初頭に納品されており特段の問題は生じていない。
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Research Products
(3 results)