2019 Fiscal Year Research-status Report
紅藻類に含まれる急性胃腸炎原因アニサキス寄生虫に対する新規駆虫物質に関する研究
Project/Area Number |
18K05820
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
浅川 学 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (60243606)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アニサキス / マサバ / 急性胃腸炎 / 寒天侵入法 / Anisakis pegreffii |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、日本国内の市場に流通する産地別水産物におけるアニサキス寄生数をマサバを用いて検討した。即ち、広島県および富山県内の小売店から購入した日本近海産(済州島(韓国)、宮城県、富山県、島根県)の鮮度良好のマサバ内臓から、アニサキスを1隻ずつピンセットで取り出し、生理食塩水を満たした滅菌シャーレに移し、マサバ個体あたりのアニサキス寄生虫体数を測定した。供試したすべての産地のマサバにおいてその半数以上の個体にアニサキスの寄生が認められたが、日本国内で漁獲されたマサバ1尾あたりのアニサキスは最大で19隻(宮城県産)であった。一方、済州島産マサバ1尾あたりに寄生するアニサキスの個体数は極めて高く、最高965隻(最低281隻)であった。また、マサバの内臓に寄生するアニサキスは主にAnisakis pegreffiiであった。アニサキスの寄生(穿入)部位は肝臓などの内臓が中心であったが、筋肉内にも穿入が認められたことから、刺身等の生食には引き続き厳重な注意が必要である。生鮮水産物(特に、サバに代表されるいわゆる”青魚”)の生食を原因とするアニサキス寄生虫症は、患者の消化管内で不規則運動をする可動性虫体が胃腸壁に穿入することにより発症する激しい痛みを伴う急性胃腸炎であることから、その不規則運動を抑制する活性物質の探索を行った。今年度は、本活性評価法として昨年度その有用性を明らかとした寒天侵入法に加えて、新たに24穴マイクロウエルプレート中のアニサキス寄生虫を実体顕微鏡で観察する方法を併用した。その結果、アニサキス症の原因となる不規則運動を抑制する効果がテルペン類などに認められた。また、南西諸島産の一部海藻にも同様の活性が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度の研究計画における主目標は、前年度に引き続き、市場に流通する産地別水産物、特に、アニサキス寄生虫症を引き起こす主要な原因食品であるマサバを用い、アニサキスの寄生数、種の判別を行うと共に、アニサキス可動性虫体の特徴である不規則運動の抑制活性物質の探索と得られた活性物質の諸性状に検討を加えることである。まず始めに広島県および富山県内の小売店から購入した日本近海産(済州島(韓国)、宮城県、富山県、島根県)の鮮度良好のマサバを用い、個体あたりのアニサキス虫体数を測定した。その結果、供試したマサバにおいて半数以上の個体にアニサキスの寄生が認められた。日本国内で漁獲されたマサバ1尾あたりのアニサキスは最大で19隻(宮城県産)であった。一方、済州島産マサバ1尾あたりに寄生するアニサキスの個体数は極めて高く、281~965隻であった。マサバ内臓から検出されたアニサキスは主としてAnisakis pegreffiであったが、一部、A. simplex(s.s)も存在することが明らかとなり、刺身等の生食には引き続き厳重な注意が必要である。アニサキス寄生虫症は、可動性虫体が胃腸壁に穿入することにより発症する急性胃腸炎であることから、その不規則運動を抑制する物質の探索を行った。今回、アニサキスに対する運動抑制活性物質の探索には寒天侵入法に加えて、アニサキスの運動能力を明瞭に判別できるマイクロウエルを用いる実体顕微鏡観察法を併用した。その結果、テルペン類を添加した実験群では、アニサキスは寒天への侵入はなく、アニサキスの侵入能力低下に効果があると考えられた。例えば、リモネンでは虫体は生きているものの、3時間以内に運動は抑制されていた。また、南西諸島産の一部海藻にも同様の活性成分が含まれていることが認められた。以上の結果から、本年度の研究目的は概ね達成することができたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査研究により済州島(韓国)産マサバ鮮魚に極めて多くのアニサキス(1尾あたり281~965隻のAnisakis pegreffi)が寄生していることが明らかとなり、本研究課題を実施する際に使用するアニサキスの供給源を確立することができた。アニサキス寄生虫症は、不規則運動を伴う可動性虫体が胃腸壁に穿入することにより発症する激しい痛みを伴う急性胃腸炎である。そこで、昨年度に引き続き、アニサキス寄生虫体の特徴であるヒト消化管内における不規則運動を抑制する活性物質の探索を行った。アニサキス寄生虫の不規則運動抑制活性物質の探索には、昨年度その有用性を明らかとした寒天侵入法に加え、新たにアニサキスの不規則運動の有無を明瞭に判別できるマイクロウエルを用いる実体顕微鏡観察法を併用した。その結果、アニサキス可動性虫体の不規則運動を抑制する活性がテルペン類に認められた。アニサキスの不規則運動抑制成分探索を目指した本スクリーニング法の採用により当該活性成分の探索を効率よく行えることが示された。本法に数種カラムクロマトグラフィーを組み合わせることにより、効率よく活性成分の単離・精製を行うことが可能となり、今後のアニサキス寄生虫駆虫剤開発の飛躍的な推進が期待される。引き続き、本研究成果をアニサキス寄生虫で問題となるアニサキス以外の寄生虫、例えば、マダラ内臓に寄生するコントラシーカム駆虫薬への応用に向け検討を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度の研究目的はほぼ達成できたが、消耗品費(主として試薬費用)の一部に残額が発生した。本残額は翌年度分として請求した助成金と併せて、試薬等の消耗品(主として機器分析に使用する試薬類)の購入に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Toxicity and Toxin Composition of the Greater Blue-Ringed Octopus Hapalochlaena lunulata from Ishigaki Island, Okinawa Prefecture, Japan2019
Author(s)
Manabu Asakawa, Takuya Matsumoto, Kohei Umezaki, Kyoichiro Kaneko, Ximiao Yu, Gloria Gomez-Delan, Satoshi Tomano, Tamao Noguchi, Susumu Ohtsuka
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Journal Title
Toxins
Volume: 11
Pages: 245-253
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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