2020 Fiscal Year Research-status Report
魚由来線維芽細胞のコラーゲン産生を促進するオリーブ葉成分の同定と作用機構の解明
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18K05821
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
小川 雅廣 香川大学, 農学部, 教授 (10398034)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金久保 光央 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (70286764)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コラーゲン / オリーブ葉 / ポリフェノール / オリーブハマチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、線維芽細胞のコラーゲンを増やすオリーブ葉成分の特定と、その成分が線維芽細胞にいかに作用してコラーゲンを増やすのか、そのメカニズムを解明することである。昨年度の【Ⅲ】の研究において、オリーブ葉成分で処理した細胞ではアスコルビン酸(ASC)と還元型グルタチオン(GSH)の量が増えることを明らかにし、その増加したASCとGSHがコラーゲンの増加に関わっていることが示唆された。ASC合成の上流にあるのがGSHであることから、本年度は【Ⅲ】において細胞内のGSHが増えた要因を明らかにすることとした。GSHの合成に関わる細胞内タンパク質量や酵素活性を調べた。また、線維芽細胞の小胞体でコラーゲン前駆体の三重らせん構造形成を助ける機能により成熟型コラーゲン形成に重要な役割を担っているタンパク質HSP47の発現量も調べた。以下にその結果の概要を示す。 1)GSH合成の律速段階はシスチンである。そのシスチンを細胞内へ取り込むのに必須なのが細胞膜上のトランスポーターxCTである。オリーブ葉抽出物で処理した細胞ではxCTの発現量が増えた。 2)細胞内の酸化型グルタチオン(GSSG) をGSHに変換する酵素GSH-Rの酵素活性をて調べたが、オリーブ葉抽出物で処理してもGSH-Rの酵素活性は増えなかった。 3)オリーブ葉抽出物で処理した細胞のHSP47の発現量をウエスタンブロッティングで調べたところ、オリーブ葉抽出物で処理により細胞内のHSP47発現量が増えた。 以上のことよりオリーブ葉抽出物にはGSHの生産原料シスチンの取り込みを促進するトランスポーターの発現量を増やす作用があり、その結果細胞内のASCが増え、成熟型コラーゲンが増加したものと推察された。また、コラーゲン前駆体の三重らせん形成を助けるHSP47の発現を促進したこともコラーゲン量の増加に寄与した可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
【Ⅰ】のオリーブ葉抽出物処理によってコラーゲンを増やしやすい細胞(GAKSとKMST-6)の選定は、昨年度ですでに終えている。 【Ⅱ】では、「精製したOleuropein、Luteolin-7-glucoside、VerbascosideをKMST-6に添加し、コラーゲン増加活性を調べ、線維芽細胞のコラーゲンを増やすオリーブ葉成分を決定する」予定であったが、コロナの影響で実施できなかった。進捗は遅れている。次年度に行う予定である。 【Ⅲ】のコラーゲン増加メカニズムの解析については手がかりをつかむことができたが、全貌を明らかにするまでに至っていない。進捗は少し遅れている。次年度、より精度の高い実験を実施し、コラーゲン増加メカニズムを明らかにしていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
【Ⅱ】では、精製したOleuropein、Luteolin-7-glucoside、VerbascosideをKMST-6に添加し、コラーゲン増加活性を調べ、線維芽細胞(KMST-6)のコラーゲンを増やすオリーブ葉成分を決定する。【Ⅲ】のコラーゲン増加メカニズムの解明については、ASCとGSHを線維芽細胞内で増やすのに関わる細胞内タンパク質の発現量の解析を高い精度で実施していく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、コロナの影響で研究室への出入が制限され、十分な実験時間を確保することができなかった。そのために使用額が生じた。
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Remarks |
著者名:小川 雅廣, 論文標題:オリーブハマチの肉質の特徴, 雑誌名:百十四経済研究所 調査月報, 403号, pp10-16, 2021年3月出版 著者名:小川 雅廣, 論文標題:オリーブ葉の機能性を活かした食品開発支援, 雑誌名:FFIジャーナル, 225巻3号, pp238-243, 2020年7月出版
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