2018 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of high pressure resistance mechanism of the deepest sea amphipods
Project/Area Number |
18K05835
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
小林 英城 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生命理工学研究開発センター, 主任研究員 (40399564)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 炭酸塩補償深度 / 結晶性炭酸カルシウム / アルミニウム / カイコウオオソコエビ |
Outline of Annual Research Achievements |
カイコウオオソコエビは、水深10,000m付近で棲息する超深海性ヨコエビの一種である。その外骨格には、炭酸カルシウムの結晶(カルサイト)が存在し、外骨格の表面は水酸化アルミニウムゲルが覆っている。通常、結晶性炭酸カルシウムは、水深5,000mより深い海域では、水圧により分解することが知られいる。カイコウオオソコエビに存在するカルサイトは、水酸化アルミニウムゲルにより反故されているため、存在できると予想された。そこでカイコウオオソコエビの外骨格に存在する水酸化アルミニウムゲルの機能について、検証を行った。カイコウオオソコエビから外骨格を剥離後、二等分して、片方はミリQ水にて洗浄し、アルミニウムの除去を行った。外骨格をミリQ水で洗浄すると、アルミニウムは除去されることは、電子顕微鏡を用いた特性X線解析で、確認済みである。これを三個体用いて、それぞれ外骨格試料を試料を準備した。外骨格試料はカイコウオオソコエビの生育環境である100MPa、2度という条件で、加圧実験を行った。 その結果、水酸化アルミニウムゲルを除去した外骨格試料から、外界水相へのカルシウムの溶出が認められた。外骨格表層に存在する水酸化アルミニウムゲルは、形態維持に必要な結晶性炭酸カルシウムが水圧による溶解を阻害し、カイコウオオソコエビの超深海環境への適応機構の一つであることがわかった。水酸化アルミニウムゲルは胃粘膜の保護剤にも用いられており、炭酸カルシウムの分解に必要な二酸化炭素の透過を阻害していると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炭酸塩補償深度より深いところに生息するカイコウオオソコエビの外骨格に存在する結晶性炭酸カルシウムの保存に、外骨格表面に存在するアルミニウムが関与していることを明らかにした。カイコウオオソコエビの深海適応機構がの一つが解明されたことが、理由である。
|
Strategy for Future Research Activity |
アルミニウムゲルがどの程度結晶性炭酸カルシウムの保存に有効か定量化するため、in vitroで結晶性炭酸カルシウムとアルミニウムを用いて、加圧実験を行う。
|
Causes of Carryover |
当該年度で、カイコウオオソコエビ外骨格表層に存在するアルミゲルが、結晶性カルシウム保存に重要な役割を持つことが明らかとなった。そのため、予定していた油成分の解析は行なう必要が無くなり、次年度使用額が生じた。 今後は、アルミニウムゲルの影響のみならず、油成分についても検討する予定であり、油成分の分析実験、定量実験に使用する予定である。
|