2020 Fiscal Year Research-status Report
輸入小麦政府売却方式・国産小麦取引方式の変遷と製粉企業の経営行動・再編
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18K05842
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
横山 英信 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (70240223)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 小麦主産地 / 製粉企業 / 地場産小麦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,今後の製粉企業の経営行動にも影響を与えると考えられる,政府の「食料・農業・農村基本計画」が2020年3月に策定されたため,最初に国産小麦に焦点を置いた同計画の分析を行った。そこでは,この間のTPP11や日米貿易協定による輸入小麦のマーク・アップ引下げは,国産小麦の生産維持・拡大にとってはマイナスの影響をもたらすこと,この間の国産小麦の「逆ミスマッチ」も生産が減少する中で生じており,国産小麦の生産拡大を保障するためには国産麦振興費への一般会計からのさらなる補てんが必要であることを指摘した。 次に,製粉企業の原料小麦仕入れと製品小麦粉販売の実態を把握するために,九州北部の製粉企業H社に対する聞き取り調査を行った。同社は年間の小麦粉生産量が600tという零細製粉企業であり,その最大の特徴は原料小麦をすべて同社所在県の県産小麦で賄っているところにある。同社の小麦粉の販売先はほとんどが県内の菓子メーカーであり,同県産100%小麦使用が同社の販売戦略上の強みとなっている。原料仕入れについては入札5割,相対5割となっており,原料を確実に仕入れるために県内の農協と密接な関係を保ってきている。ただし,同県産小麦は年産や県内産地によってたんぱくにばらつきがあり,同社は県内の産地に対してその安定を図ってもらいたいという要望を持っていた。 また,同県の製粉をめぐる全体的状況を把握するために同県の製粉協同組合に対しても聞き取り調査を行った。そこでは,県内の中小製粉企業は,小麦粉の販売先との関係で,県内産小麦に対して量と品質の安定を最も重視していること,そしてそのために小麦生産者に対する農協の生産・栽培指導に大きく期待していることを把握した。 以上,今年度は,国産小麦をめぐる政策的課題と,中小製粉企業の立場から見た小麦産地の課題を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,「食料・農業・農村基本計画」に係る国産小麦をめぐる政策的課題の分析,及び九州北部の小麦産地の調査・分析を行い,研究を進展させたが,一方で,昨年度相手方との調整がつかずに調査を見送った栃木県・埼玉県の製粉企業についてはコロナ禍の影響によってまたもや調査を見送らざるを得なかった。このため,輸入小麦政府売却方式・国産小麦取引方式の変遷に対する製粉企業の経営行動に関する実態調査が当初計画よりもやや遅れる結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は2018年度から2020年度までの3年間の予定であったが,コロナ禍の影響で2020年度に予定していた調査のいくつかを断念せざるを得なかったため,2021年度までの延長を申請し,認められた。 これを受けて,2021年度は栃木県・埼玉県の製粉企業の調査を行うとともに,製粉企業の全国団体への聞き取り調査を行い,また国内の製粉企業に係る資料・統計分析も行うことによって,3年間の研究全体を取り纏め,輸入小麦政府売却方式・国産小麦取引方式の変遷と製粉企業の経営行動・再編についてその全体像を明らかにし,製粉産業再編を把握する際の視点を析出する。
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Causes of Carryover |
2020年度は,コロナ禍の影響で当初予定していた製粉企業の調査のいくつかを断念せざるを得ず,これが次年度使用額発生の主因となった。2021年度までの研究の延長が認めたため,次年度使用額については、201年度に行う調査の旅費,製粉企業に係る文献・資料の購入,文具などに使用する予定である。
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Research Products
(1 results)