2019 Fiscal Year Research-status Report
外食産業向け青果物流通システムの機能高度化と再編に関する研究
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18K05851
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
林 芙俊 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (70571107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高梨子 文恵 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (60547214)
齋藤 文信 高崎健康福祉大学, 農学部, 准教授 (40425476)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 外食産業 / 野菜商社 / 市場外流通 / 卸売市場 / 加工・業務用青果物 / 中間流通 / 流通チャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、外食向け野菜流通業者のなかでも最大手であるD社に数度の調査をおこなった。その結果、D社のコア・コンピタンスとして、全国的な事業体制、充実した配送網、鮮度・衛生管理があるのではないかと考えられた。D社は全国にチェーン展開するファミレスを主要な顧客としているが、その場合、全国的な事業体制は、地域によらず均質な野菜を納品できるという強みをもたらしている可能性がある。また、配送網については、販売している野菜のうちセントラルキッチンに一括納品するものは全体の2~3割程度で、残りは個店への配送をおこなっていることが明らかとなった。個店への配送は、市場仲卸の業務でもあるが、全国的な青果物の配送網を有している業者は少なく、D社の競争力の源泉となっているものと考えられる。 また、全国的な事業体制を構築するにあたっては、部分的には提携会社を活用しているが、それらのなかには買収・資本参加により系列化されたものもある。このような手法を活用していることも、D社の特徴といえるだろう。 そのほか、D社との比較対象として東京大田市場などの卸売会社にも調査をおこなった。 今後は、以上のようなD社の特徴が、顧客である外食産業側からどのように評価されているかに関する調査を進めてゆく。D社の認識としては、外食産業では産地を訪問して野菜を仕入れる目利き力のある仕入れ担当者は、減少しているのではないかとのことであった。これは、外食産業が青果物の中間流通段階への依存度を高めることにつながるが、D社にとっても、そのような動きは戦略に合致したものである。外食産業を取りあげた既存研究では、食材の差別化をおこなうために産地との連携を強めたり、農業に参入したりする事例が取りあげられているが、今回捉えられた外食産業の動きは、それに逆行するものである。こうした外食産業側の状況について、今後研究を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画において予定していなかった、青果物を出荷する側の産地における生産者組織化の問題についても検討をおこない、書籍として出版した。そのため、今年度中に外食産業側の調査に着手するはずであったのが、中間流通業者への調査をおこなうにとどまってしまった。また、年度末に入ってからのことだが、コロナウイルスの問題で取りやめた調査もあった。しかし、D社への複数回の調査が実施できたことにより、次年度に調査すべき課題を明確化することはできた。
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Strategy for Future Research Activity |
外食産業への調査を重点的におこない、どのような経営戦略をとっているか、そのもとで野菜調達に関して何を重視しているのか、といった点を明らかにする。また、流通システム間競争の競争構造を明らかにするため、卸売市場流通についての調査も引き続きおこなう。市場流通を担う企業のうち、D社と直接的に競合するのは、広域的かつ加工など多角的な事業展開をおこなっている仲卸であると考えられる。そうした企業に対して調査を実施してゆく。 コロナウイルスの影響で、調査の実施が困難となっているが、依頼できる調査先には、遠隔会議システムを用いた調査を要請し、少しでも多くのデータを収集することに努める。 次年度は最終年度として、これらにより収集されたデータをもとに、外食産業向け流通システム間競争の構造について検討をおこない、結果を論文として取りまとめ公表していきたい。
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Causes of Carryover |
近隣の調査先が多かったために旅費を節減できたこと、コロナウイルスの影響で年度末に調査を取りやめたことから、予算使用額が少なくなった。次年度においては、調査対象範囲が全国に広がることから、必要な経費として助成金を使用していきたい。
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Research Products
(1 results)