2018 Fiscal Year Research-status Report
農村におけるwell-beingと農業効率化の関連性に関する実証分析
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18K05853
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
廣政 幸生 明治大学, 農学部, 専任教授 (00173295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 晋作 明治大学, 農学部, 専任講師 (00569494)
岡 通太郎 明治大学, 農学部, 専任講師 (70402823)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | well-being / 農村 / 幸福度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究成果の第1は、農村のQOLであるwell-beingをどのように捉えるかについて、well-beingの理論、概念の検討を行った。幸福度と効用理論の関係性について、始祖A.Smith以降の経済理論、効用理論の系譜について検討した、特に、新古典派以降の効用理論は矮小化して扱えないことを示したが、A.Senのケーパビリティ概念とは整合性があり、ケーパビリティを幸福度に関連付け、幸福要因として扱えることを論じたので、今後、ケーパビリティ研究の成果を調査項目に加える予定である。第2に、継続して幸福度の調査を行っている3市町村について、幸福度形成要因の調査結果についての数値を比較したことである。統計的な検定を経た考察によれば、地域として、明確な特産物や産消連携の組織的取り組みを長年やっていて、活力があるよりある地域ほど、総合的な幸福度は高く、幸福要因も、各種の生活満足度も高くなることが明らかとなった。今後、本研究を推進していく上で、QOL及びwell-being解釈の前提となり、考察、検証に大きな意義を持っている。調査対象の継続性をもたせるという意味でも重要な結果である。第3に、well-beingを検討する上で必須となる行動経済学の観点の導入に関して、消費者を対象に分析をしたことである。食品の購入に関し消費者は何を考え、行動するのか、従来の効用最大化理論に替わり意識と知識、損失回避を考慮したモデルを考察し、リピーターとなる要件について考察をした。情報が行動に与える影響についても検討をしている。それらがマーケティングどのように役に立つのかは、農村においてwell-beingを高めるために、農産物を売ることに対し示唆を与えるとともに、今後の調査項目に加えることを考慮する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)QOL、well-beingの理論、概念整理と検討について、well-beingの代表として幸福度を取り上げ、経済理論、効用理論よりその妥当性に付いて、検討を加え、従来の経済理論では対処が難しく、A・Senのケ―パビリティの概念が合致することを明らかにしたので、研究蓄積のあるケ―パビリティの内容を応用して、研究調査を促進することができる。2)実証分析として、継続している調査結果をまとめることができた。農村3地域の幸福度、生活満足度、SOC、パーソナリティに関するデータについて統計分析を行い、地域間の比較より、農村の状況によって、QOLあるいは幸福度要因の差が明らかになったことで、政策よりも、地域の個別事情が起因しているとの仮説をもつことができた。今後のwell-beingに関する地域調査、調査項目の設定に役立つとともに理解を深めることができる。3)行動経済学の応用について、本研究は、仮説及び手法に行動経済学、認知心理学の成果を応用することを試みている。経験する自己、損失回避(プロスペクト理論)、メンタルアカウンティングについて、消費者行動の決定要因に組み込み、ヒューマンの行動を検討した。実証分析の結果を参考にして、今後の農村調査における調査項目、ヒアリング項目を設定するに際し有用である。また、方法論としても有用である。以上より、研究はほぼ順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)well-beingとしてのケ―パビリティの指標化について、引き続き、サーベイや概念、適用を検討する。2)調査対象としている3地域において、well-beingを為す意識について、引き続き農家調査を進める。特に、農地の集積に対しての保有意識の影響ついては明瞭になっていないために、集積が進んでいる2地域の特定の集落営農を選択し、委託農家の当事者意識と所有農地への保有意識との関係を明らかにする。アンケートによる悉皆調査に加え、インタビュー調査を行う予定である。また、農地受託者との関係を信頼度、損失回避などの手法を具体化して分析を進める。3)受託者の行動はこれまで分析されていない。担い手としての経済行動だけでなく、何故、非経済的な行動をするのかは、これまで十分に考慮されてこなかった。本研究では新しくJ.Akerlofが概念付けをしたアイデンティティを導入することで分析可能とする。アイデンティティ理論の適用、それを用いた実証分析を検討する。信頼度、アイデンティティが協業の関係及び経済性、公平性とどのように関連しているのか、どのように保たれているのかを考察することで、農村のよりよいwell-beingについて検討する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた、海外研究者との打ち合わせ及び海外調査が先方の都合により実施できなかったこと。また、研究対象地域での集落調査の実施が年度末となったことによって、データの回収に時間がかかり、入力、データ解析のために予定していた雇用ができなかったことによる。海外調査及びデータ解析のための雇用は2019年度に実施するので、助成金の使用について大きな変更はない。
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Research Products
(5 results)