2018 Fiscal Year Research-status Report
新たな食料品アクセスマップによる超高齢社会での食生活改善に向けた実験的介入研究
Project/Area Number |
18K05856
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Research Institution | Policy Research Institute, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries |
Principal Investigator |
高橋 克也 農林水産省農林水産政策研究所, その他部局等, 研究員 (20371015)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
薬師寺 哲郎 中村学園大学, 栄養科学部, 教授 (20356306)
池川 真里亜 農林水産省農林水産政策研究所, その他部局等, 研究員 (20786553)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 食料品アクセス / 高齢者 / フードシステム / エビデンス |
Outline of Annual Research Achievements |
食料品アクセス問題は流通や経済上の障害にとどまらず、高齢者を中心に食生活や健康に悪影響を及ぼす、超高齢社会となる我が国において早急に解決すべき重要な課題である。 本研究の目的は、食料品アクセス問題において生活の質に直結する食生活への影響とその改善効果を介入実験により検証することである。本研究によって、今後ますます深刻化する食料品アクセス問題の影響度がエビデンスとして示されるとともに、具体的な食生活改善の効果検証はアクセス対策のみならず、将来的な生活習慣病の予防といった医療費削減や健康格差解消にも大きく寄与できる。本年度は、2015年国勢調査を基にした新たな食料品アクセスマップを推計公開するとともに、同手法による2005年および2010年の遡及推計を行った。その結果、3大都市圏など都市部においてアクセス困難人口が急増しているのに対し、地方部での増加は緩やかであった。また年齢階層別には、75歳以上後期高齢者の増加が顕著なのに対し、65-74歳の前期高齢者では減少する傾向が確認された。アクセス困難人口増加の要因分解では、高齢者人口の増加を示す人口要因の寄与度が最も高く、次いで店舗の減少をしめす店舗等要因、自動車利用の増加を示す自動車要因がマイナスという結果が示された。これら研究成果について内外の学会にて報告するとともに論文として投稿・公表したが、今後は自治体のアクセス対策や社会経済要因等を考慮した全国市区町村の類型化を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、多様な条件から食料品アクセス問題と食生活の関連をエビデンスとして検証しながら、それらを具体的な食生活改善の提案として現場にフィードバックすることで、より効果的なアクセス対策を導くことを主たる目的としている。分析の基礎となる食料品アクセスマップの推計結果及び地域や年代別動向については、日本フードシステム学会をはじめ日本公衆衛生学会総会においてシンポジクムを企画・報告し、食料品アクセス問題の各種影響とともにそれらを緩和・軽減する実効的な対策が可能になることから、生活の質に直結する食生活を豊かにする貴重な情報が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
食料品アクセス問題が、日常的な購買行動だけではなく個人の食生活や健康に影響を及ぼしていることは、国内外の研究からあきらかにされつつある。一方で、食料品アクセス問題と食生活の明確なエビデンスが検証されているのは、農山村や高齢者といった一部の地域や年代での事例のみであり、貧困世帯など特定の集団を含め幅広い年代や地域など多様な条件の下では未解明で、実際には食料品アクセス問題の影響は多方面に及んでいることが考えられる。今後はアクセスマップによる全国市区町村の類型化により、悪化、改善等の代表的な地域を選択するとともに、自治体関係者等との調整後、食事摂取頻度調査を組み込んだ住民調査を実施し、栄養素摂取量とともに健康指標や主観的健康感やソーシャル・キャピタルとの関連を検証する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた住民調査について、現地自治体等との調整から次年度以降の実施になったため次年度使用額が生じた。
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