2021 Fiscal Year Research-status Report
りんご作経営における新規加工需要に対応した経営方式採用条件の解明
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18K05858
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
吉仲 怜 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (70548487)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 果樹農業 / リンゴ作経営 / 業務加工用 / 省力化 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国におけるりんご主産地では、りんご果実の高い品質を支える雇用労働力市場の狭隘化により、労働力不足が顕在化しつつある。その一方で、担い手の減少に伴う園地流動化が進んでいる。また需要への対応形態として、1.既存品種の加工用途向け販売、2.実需の需要形態に応じた品種選択、といった経営対応が散見されるが、一般化・普及化されているとは言い難い。そこで本研究は、新規需要に対応した農業経営方式の採用条件を検討することで、今後のりんご作経営の経営展開に向けた知見を得ることを目的としている。 りんご作を含む果樹農業は単年度での経営実績の評価は難しいため、2021年度は継続して経営データを収集する一方で、加工用りんご品種として実需からの需要が多い品種である紅玉を対象として、生産費用と収量の関係性に関わる調査を行った。紅玉は、洋菓子事業者を中心に高い需要があるにもかかわらず、ふじなどの品種への転換が進んだため、生産面積を大きく減じてきた品種である。ただし現在、その高い需要を背景に再び高値販売や有利販売につなげるケースも多く、加工用品種として生産回帰の動きもみられる。ただし高い収量性とふじとは異なる技術要求があるため、改めて加工契約向け省力栽培様式の生産費を検討することで、今後に向けた知見を収集した。 その結果、加工用向け栽培など契約栽培方式をとる場合においては、規格内収量の増加(出荷規格の簡略化)に伴う選果労働時間の軽減が可能であったため、総じて生産費用の低減が可能となる結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
果樹農業経営体の調査は順調に進んでおり、経営的特質の概要の把握が可能な状況である。ただし経営体間で経営成果には個人差が大きい。そのため、近い将来の労働力減少下においても継続可能な経営モデルを構築する上で、今年度取得した経営成果を踏まえて一般化を図る必要がある。 ただし昨年度同様、年度当初より新型コロナウィルスへの対応により予定が大幅に遅延したため、当初計画の遂行ができなかった。そのため、当初計画を若干変更して対象経営を限定して調査課題を設定することとなった。 また、研究発表についても上記と同様の理由により活動が停滞した。そのため、本研究課題は補助事業期間延長承認申請を行い、次年度改めて課題を進めることとしている。 したがって上記進捗状況の自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、以下の3点につき検討を進める。 第1に、今後のりんご果樹産地における経営対応の一方向として、自然災害等のリスクと農業経営のあり方を、検討対象とする。具体的には、りんご作経営のリスク認識と態度、及びそれらが生産技術構造に与える影響を分析・考察することで、省力化等技術の評価を行う。 第2に、高密植栽培方式の評価である。近年青森県などの積雪地域においても、トールスピンドル栽培によるりんごの高密植栽培の動きが進んでいる。これは高い単位収量が期待されるだけでなく、作業の簡易化や軽労化が期待されるといった点で評価されている。一方、特に初期生育期における樹体管理作業に多大な労力を要するとともに、樹体の固定用支柱や灌水設備が必要となるなど、初期投資額が大きいことがデメリットとされている。そのため、現在は複数の農業経営体が取り組むこれら高密植栽培の初期投資、及び初期生育管理に係る労働時間等の計測により、これら栽培様式の評価を行う。また、加工用栽培園地としての活用可能性を検討していく。 第3に、近年古い果実品種などを活用した産地振興や実需者への差別化販売などの動きがみられる。今後の加工需要へ向けた生産方式の確立には、既存品種にこだわらずに多様な品種構成を採ることも、日本国内でも十分に検討の余地があると考えられる。そこで、英国原産品種であるブラムリーの産地化に成功している長野県小布施町を対象に、産地形成と販路開拓の経緯と産地戦略を明らかにし、これら対応の成果を検討する。 これらの調査をまとめて学会等で報告し、研究成果の公表につなげたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス対応により、所属地域内の農業経営体へのヒアリング調査に研究対象及び範囲が限定された。当初予定した長野県などの他産地への移動が制限されたため、旅費の使用額を中心に大幅に計画と乖離することとなった。 そのため次年度は感染対策を講じつつ、県外への調査の再開を予定しており、旅費を活用する予定としている。
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