2019 Fiscal Year Research-status Report
「純土地持ち非農家」多数派化の下での農地所有者行動と地域農業資源管理に関する研究
Project/Area Number |
18K05864
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊庭 治彦 京都大学, 農学研究科, 准教授 (70303873)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 明広 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 主席研究員 (20355465)
山下 良平 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (40515871)
片岡 美喜 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (60433158)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 純土地持ち非農家 / 農地の集約化 / 水利管理 / 人・農地プラン / 大規模農業経営 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目となる本年度は、国内研究では、年度当初に科研メンバー全員が参加しての合同現地調査・研究会を開催し、本科研の進捗状況および今後の研究方向についての確認を行った。その上で、各メンバーがそれぞれに研究を行った。その一つとして、(*1)では、純土地持ち非農家が多数派化した集落を活動領域とする大規模農業経営に関して、経営の内部環境に対する管理のみならず、外部環境である地域農業における共同活動等に対して管理機能を担うことの実態と論理を明らかにした。共同活動等に対する管理主体は、これまで集落の実行組合であった。しかし、純土地持ち非農家の多数派化により、実行組合の管理機能が低下しつつある地域は少なくない。当該集落では、大規模農業経営が、生産効率に大きく影響する共同活動等を管理することが必要となるのである。一方、(*2)では、農地の貸し手である純土地持ち非農家自身の行動に関して、借り手である大規模農業経営との協力関係の形成により地域農業の維持を図ることの実態とその論理を明らかにした。
*1 伊庭治彦(2019)「土地持ち非農家が多数派化した集落における農業経営の管理領域」『農業と経済』第85巻第9号,昭和堂. *2 Sakamoto, Kiyohiko. Iba, Haruhiko,(2020) “Corporatization as hybridization in rural Japan: A case of Iwasaka in Shiga Prefecture”, edited by Wolfram Manzenreiter, Ralph Lutzeler and Sebastian Polak-Rottmann, “Japan’s New Ruralities: Coping with Decline in the Periphery”, Routledge.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間2年目となる本年度の研究について、国内および国外の研究において現地調査の実施、調査結果の分析、研究成果の発表を行い得たことから「概ね順調に進展している」と判断できる。国内研究については年度当初に研究代表者および研究分担者全員が参加し、滋賀県長浜市に位置する二つの大規模農業経営法人および長浜市役所に対して純土地持ち非農家の増加に関する聞き取り調査を行った。農業農業法人に対しては、これまでの経営規模拡大の経緯および農地の借入先である農地所有者への対応、および農地所有者の動向に関して聞き取りを行った。また、長浜市役所に対しては農地の利用調整に関わる農家の取り組みの動向、地方行政としての諸制度の設置と、農業者による活用の推進等について聞き取りを行った。これらの調査結果からは、純土地持ち非農家が増加傾向にある中で、(1)地域農業にどのような変化が起きているか、また、(2)そのことによる大規模農業経営への影響、(3)負の影響を軽減するための取り組み、ついての実態に関する情報を得ることができた。 一方、国外研究については、借地により事業を開始した米国の小規模農場が、地域社会との関係を構築しつつ、規模拡大と合わせて多角的に事業を展開することの実態把握を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度となる2020年度は、2018-2019年度の成果を基に科研研究のとりまとめとして、純土地持ち非農家が多数派化した地域における地域農業の維持に関する論理構築を行う。具体的には、地域農業に関係する諸主体(大規模農業経営、小規模農業経営、純土地持ち非農家、集落営農等の農業者組織、実行組合等)が担う農作業上および農地の利用調整上の機能とそれらの組み合わせに関して分析・検討を行う。その際、各主体の構造的動向、各主体に期待される機能の変化、農業施策の変化とその影響等を変数として分析に組み込む。なお、これらの研究を推進するために必要となる国内および国外の補完調査については適宜行うこととする。また、研究成果については、学会発表、論文発行、書籍刊行等により公表する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス問題の影響により予定していた調査を実施できず延期したことから、調査に関連する旅費等が未執行となったため。
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