2018 Fiscal Year Research-status Report
Research on the Logic of Regional Developments of Organic Agriculture: Analysis by the Function and Value Change Framework
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18K05871
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
谷口 吉光 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (60222121)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 有機農業 / 農業政策 / 農の多面的機能 / 自然共生型農業 / 機能の系 / 価値転換の系 / 千葉県いすみ市 / 岐阜県白川町 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機農業や自然農法などの「自然共生型農業」が地域に広がり、地方自治体の政策に取り入れられる事例が増えている。中には野生生物との共生や学校給食を通した食農教育の実施など、従来の農業政策の枠を超えた事例もある。自然共生型農業の地域展開を説明するには、付加価値などの経済的要因だけでは十分ではなく、自然共生型農業独自の機能や価値転換に注目する必要がある。そこで本研究では「自然共生型農業の地域展開は機能的・倫理的要因によって規定される」という仮説を立て、それを検証するために全国の事例を網羅的に収集・類型化し、そのなかの重要な数事例を選んで、展開過程を「機能の系」と「価値転換の系」で分析する。それによって、自然共生型農業の展開過程において、農業の多面的機能の発揮と人々の価値転換が起こっていることを実証的に明らかにしようとする。 初年度の成果は次の通り。①全国から自然共生型農業が地域に展開した事例として約50事例を選定し、それを野生生物との共生、学校給食との連携、都市農業の振興、中山間地の地域づくり、移住促進、医療・福祉との連携、地域ブランド、総合等の15類型に分類した。 ②事例調査として、11月15~16日に千葉県いすみ市における有機農業の展開過程とそれに関わるキーパーソンの役割等を調査した。本事例は市長が主導するトップダウン型の事例であるが、展開過程の各段階で市職員、農業者、学校給食関係者などで優れたキーパーソンが現れ、与えられた課題を的確に果たすことによって有機農業が普及したことが明らかになった。 ③2つめの事例調査として、有機農業を行う移住者が多く住む岐阜県白川町およびそこと連携する愛知県名古屋市の市民団体を調査した。本事例はボトムアップ型であるが、地元の有機農家、移住者を紹介する名古屋の市民団体および移住者自身が上手に連携しながら地域に浸透していく過程を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1名の連携研究者と4名の研究協力者が大変積極的に協力してくれ、1年間に1回の研究会と2回の事例調査を実施することができた。事例調査に当たっては、研究協力者が調査のスケジュールをコーディネートしてくれたため、短期間の調査にもかかわらず必要なキーパーソンにほぼ聞き取り調査を行うことができた。それによって重要な2事例の概要を理解することができた。これによって、2年目で学会口頭発表と論文投稿を計画することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、まず5月12日に日本有機農業学会の社会科学研究会で本研究の最初の報告を行う。ここでは代表者が事例調査の報告を行い、連携研究者と研究協力者がコメントしてから総合討論を行う。次に、昨年度調査した2つの事例について補足調査を行う。それを踏まえて「有機農業研究」に論文を投稿する。 またいくつかの候補地から最適な事例を選び、3つめの事例調査を行う。
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Causes of Carryover |
旅費が予定より少なかったため。次年度の調査旅費として使用する予定である。
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