2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of soil moisture model of extremely thin ground surface which is an indicator and influence for occurrence of wind erosion
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18K05877
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
鈴木 純 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (40262696)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩田 拓記 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (10466659)
木村 玲二 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 准教授 (80315457)
松岡 延浩 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (80212215)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 土の粒の密度 / 砂塵 / 風食 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、砂塵となる微細な土の粒(以下土粒)の密度(以下、土粒密度)の決定方法の確定と、土粒が地表面から移動する臨界の風速を臨界摩擦速度と比較する際に先の土粒密度を導入して乾燥時に砂塵が発生しやすいことを確認する手法を確立した。土粒密度は、砂塵になる微細な土粒は一般に多孔質の団粒状を呈することから、砂塵となる力の釣り合いを検討する際に必須の指標である。 昨年度は土粒密度の計算過程で定義とは外れた円筒充填のデータを用いたことから、十分な精度の土粒密度を評価できてはいないと考えた。そこで今年度は、体積測定用の容器を3cmx3cmx2.2㎝の直方体クリアケースに変えたことで土粒体積決定のための単純立方充填が適用可能になった。これによって乾燥土粒密度γaは昨年の推定値が1.27~1.35g/cm3であったが、新しい方法によって0.99-1.14 g/cm3を得ることができた。これが実際の土粒密度であり、土粒子密度が土粒子密度γsが2.49g/cm3だったので,土粒密度(平均1.07)と土粒子密度の比γa/γsは43%以下であることがわかる。 降雨の後、土粒が飽和すると土粒内間隙には水が進入することで最大で土粒密度は1.64g/cm3程度に重量化する。また、自然の最大の乾燥状態は風乾とみなすことができるので、自然状態の最低の土粒密度は1.13g/cm3(含水比6%)となる。地表面に分布する薄い層の水収支は、土粒密度が飽和の間で変化すると考えられ、ごく少量の水の出入りを本研究の最終年に明らかにするだけとなった。 これらの結果から、地表面上1.8mの風速が2m/sでは粒径が0.05~1.0mmの土粒のいずれも動かない,2.5m/sを超えると0.05mmの土粒は密度が1.1~2.5g/cmのいずれも動き始めるなど、土粒の粒径と乾湿状態によって風食の発生しやすさの差異を評価できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は土粒密度の計算過程で定義とは外れた円筒充填のデータを用いたが、今年度は3cmx3cmx2.2㎝の直方体クリアケースを体積決定に用いたため、土粒体積決定のための単純立方充填が適用可能になった。これによって得られた乾燥土粒密度γaは0.99-1.14 g/cm3となることがわかった。これが実際に近い土粒密度であると評価できる。 また、地上1.8mの風速データu(1.8)から、摩擦速度の限界摩擦速度を評価した。限界摩擦速度には風乾~飽和の土粒密度1.16~1.64g/cm3と砂の密度2.5g/cm3を適用した。その結果は次のとおりである。u(1.8)が2m/sでは粒径が0.05~1.0mmの土粒のいずれも動かないが,2.5m/sを超えると0.05mmの土粒は密度が1.1~2.5g/cm3のいずれも動き始め,0.1mmの土粒は風乾時で密度が1.1g/cm3の場合だけが動く。4.0m/sでは粒径が0.1mmは密度が1.6~2.5g/cm3もすべて動き始める。5m/sでは密度1.1g/cm3の0.5mmの土粒も動き始めるが1.6~2.5g/cm3の土粒は動かない。 上記のことは、濡れた土粒や砂は動き始めにくく、乾いた微細な土粒は動き始めやすいことを表している。土粒の粒径が小さいほど砂塵として地表面を離脱しやすい、そして乾いて軽いほど飛び始めやすいことが定量的に把握できるようになった。微細な土粒の空隙率が50%程度なので、微細な土粒からこの水分が蒸発-吸水または吸湿する過程のモデリングにはめどが立った状況である。最終年度には、これまで取得したデータをまとめて本研究の当初の目的である「ごく薄い土層の水収支モデル」が確立される見込みである。 なお、本研究で確立を目指した土粒密度と土粒の空隙情報(空隙率が約50%)は、空隙充填による土粒密度の重量化の興味を起こさせる結果をもたらしている。
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Strategy for Future Research Activity |
「風食発生の指標となるごく薄い地表面の土壌水分モデルの開発」は、砂塵の発生に季節的偏りが認められ、また降雨ののち短時間のうちに砂塵が発生することから、土の粒(以下、土粒)の含水率に及ぼす諸条件の洗い出しと新たな土壌水分モデルの開発を目的として始めた。しかしながら2か年の研究によって、粒径ごとの土粒密度、特に粒径が0.1mm以下の微細な土粒の密度を特定することが可能になり、研究題目の「ごく薄い地表面」は従来の面ではなく、微細な土粒がなす微小な断面あるいは点の集まりとして評価することができるようになった。本研究最終年度は、この土粒の粒径が土層厚をなすごく薄い土層の水収支モデルを完成させることになる。
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Research Products
(3 results)