2019 Fiscal Year Research-status Report
スイゼンジノリの保全に向けた黄金川の湧水量減少原因の解明と流量回復への方策
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18K05882
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷口 智之 九州大学, 農学研究院, 助教 (00549123)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スイゼンジノリ / 湧水 / 生物保全 / 圃場整備 |
Outline of Annual Research Achievements |
現地での地下水位,流量,水温の連続観測を継続し,2018年度に得られた知見を再度確認した.また,2019年度には2度の豪雨があり,スイゼンジノリの生育に影響するほどの黄金川の水位上昇が発生した.2017年の九州北部豪雨では9割以上のスイゼンジノリが流亡し,絶滅の危機に陥った経験もあることから,スイゼンジノリの保全には当初想定していた黄金川の流量確保だけでなく,豪雨にともなうスイゼンジノリの流亡対策も急務であることが明らかになった.一方で,2019年度豪雨の影響を勘案し,当初計画では2019年度に実施予定であったアンケート調査を2020年度に延期した.2020年度にはアンケート調査によるスイゼンジノリの経済評価,ならびに,周辺水田の湛水と黄金川の湧水量(地下水位上昇)との関係を明らかにする現地調査を実施するため,2019年度ではアンケート準備ならびに調査機材の整備を進めた. また,本研究を実施した付随的な成果として,当初計画になかった他分野(細胞生物学など)の研究者や企業との新たな研究連携が立ち上がり,分野横断型でのスイゼンジノリ保全に関する研究交流が進んだ.その成果の一つとして,スイゼンジノリに関するレビュー論文を発表した.また,2018年度の平成30年7月豪雨の際に対象地区内で偶然観測された水路からの溢水記録を分析し,水田灌漑地域における豪雨時の雨水貯留現象に関する研究報文を発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画に挙げていた3課題のうち2課題については成果が得られていることから,おおむね予定どおりに研究が進んでいる.なお,2019年度に実施予定であったアンケート調査を2020年度に延期したが,既にアンケートの準備を進めているため2020年度中に実施可能である.ただし,新型コロナの影響で2020年度は調査活動が制限される恐れがあることから,一部の課題については調査を実施しながら適宜計画の見直しが必要となる可能性がある. また,当初計画になかった他分野の研究者との研究連携が進み,スイゼンジノリに関する分野横断型の研究に発展しつつある.水田地域の雨水貯留機能に関する知見も得られるなど,当初計画になかった学術的な成果が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
アンケート調査を実施し,スイゼンジノリの経済的価値を定量的に評価する.また,春先の水田湛水状況を経日的に把握し,現地観測する地下水位変化と比較することで,黄金川の湧水(地下水)に影響を与える水田域の範囲を推定する.以上の結果をもとに,本研究の課題の一つである「周辺水田域の冬期湛水による湧水回復の検討」についての結果を得る. また,他分野との研究連携をさらに推進するとともに,学会,行政,企業,地元業者を巻き込むことで具体的なスイゼンジノリ保全対策を提示することを目指す.
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Causes of Carryover |
2018年、2019年に本地区で発生した豪雨被害調査に関する別予算が得られ,当該調査に合わせて本研究の現地調査も実施したため,当初計画よりも旅費等の支出が抑えられた. また,2019年7月の2度にわたる豪雨でスイゼンジノリの生育に被害が生じたことを受け,2019年度に実施予定であったアンケート調査を2020年度に延期したため,その予算を繰り越す必要が生じた.なお,アンケート準備を進める過程で,当初計画よりもアンケート配布数を増やす必要が生じたことから,本年度抑えられた旅費をアンケート費用に充てることで対応する.
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